「自分軸」を見つける方法
「自分軸」がずっと見つからない。「こうありたい」がなく、目標もないので、進む道を決められずに行動できない。「自分軸」という考え方は、より良い人生のために大変重要な考え方です。しかし、もしかすると、やや誤解を受けやすい考え方なのかもしれません。
まず整理しておきたいのは、「自分軸」という言葉そのものです。実はこの言葉、医学的にきちんと定義された概念ではありません。一般には「自分らしく生きる」「自分で選ぶ」といった、かなりふわっとした意味で使われています。そこで私は、この言葉をもう少し実用的に定義しています。
一般的に、自分軸は「他人の評価や世間の常識に左右されず、自分の価値観や信念に基づいて判断・行動する生き方」などと説明されることが多いようです。
一方で、私はこう定義しています。「自分の行動を、自分が納得したうえで選んでいるかどうか」
反対に、行動を決めるときに「どう思われるだろう」「嫌われないだろうか」「評価が下がらないだろうか」と、他人の顔色や反応を基準にしている状態は、「他人軸」です。
この前提で、もう一度「自分軸が見つからない」という悩みを見てみましょう。多くの人が言う「こうありたいという自分がない」という言葉、実はここに大きな勘違いが含まれています。「こうありたい」は自分軸のように聞こえますが、実際には二種類あります。
一つは「こうしたい」。もう一つは「こう見られたい」です。「こう見られたい」「認められる人になりたい」「立派な人間だと思われたい」。こうした願いは悪いことではありませんが、これだけを頼りに生きようとすると、どうしても苦しくなります。
そもそも、最初から大きな目標や使命感を持っている人は、ほんの一部です。「社会を変えたい」「この分野で人を救いたい」といった立派な目標は、あとから形になっていくことのほうが圧倒的に多い。最初から持っていない自分を「みっともない」と感じる必要はありません。
ここで大事なのは、「何もない自分はよくない」という発想そのものが、実は他人軸から来ているという点です。誰から見て「よくない」のでしょうか。それは、他人の目を通して見た自分です。その時点で、もう自分軸の話からは離れています。
自分軸は、「見つけるもの」ではありません。毎日の小さな選択の中で、育っていくものです。私はこれを、「自分の行動を一度、自分のまな板にのせる」と表現しています。何かを引き受ける前に、「これに、私は納得しているのだろうか」と自分に問いかける。納得していればやる。納得していなければやらないか、タイミングを待つか、もしくは納得できる形に変えてからやる。ただそれだけです。たとえば、仕事を頼まれたときに「あまり好きではないけれど、これは自分の役割だ」と納得できるなら引き受ければいい。
逆に、「本来は自分の仕事ではない」と感じるなら、断ったり、保留したり、条件を調整するという選択肢もあります。「少し考えてから返事します」というのも、立派な自分軸です。これは特別な場面に限りません。何を食べるか、どこへ行くか、誰と会うか。
「自分は特に希望がないから、みんなに合わせよう」と思っても、それに納得しているなら、それは自分軸です。一方で、「本当は気が進まないけれど、嫌われたくないから合わせる」という選択は、他人軸になります。この「納得しているかどうか」を、日々の小さな決断で確認する癖をつける。それを繰り返していくうちに、気づいたら「こういう選び方をする自分」ができあがっていきます。それが、自分軸です。
心理学の研究にも、関連したものがあります。たとえば、エドワード・デシとリチャード・ライアンによって提唱された自己決定理論では、「人が何に突き動かされるのか(モチベーション)」について述べています。これは、「人間は、外からのアメとムチ(報酬や罰)がなくても、特定の条件さえ整えば自ら成長し、行動する存在である」という考え方です。それに必要なものの中に自律性(Autonomy)があります。これは、自分の行動を「自分で選び、決めている」という感覚のことです。まさに「自分軸」そのものですよね。
つまり自分軸とは、立派な理念や将来像ではありません。「今日はこれでいい」と、自分が自分にOKを出せる選択を積み重ねていくことです。その延長線上に、いつの間にか「自分らしさ」は形になっていきます。
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精神科医Tomy
1978年生まれ。東海中学・東海高校を経て、名古屋大学医学部卒業。医師免許取得後、名古屋大学精神科医局に入局する。39万フォロワー突破のX(旧・Twitter)が人気で、テレビ・ラジオなどマスコミ出演多数。著書『精神科医Tomy が教える1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)に始まる「1 秒シリーズ」は、累計36万部を超えるベストセラーに。『精神科医Tomy の気にしない力』(だいわ文庫)、『精神科医Tomy が教える30代を悩まず生きる言葉』(ダイヤモンド社)、『うつ未満。「大丈夫」と言えない日の相談室』(秀和システム新社)ほか著書多数。
X:@PdoctorTomy

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