頭の中に浮かんだものを書き出してみる
「このままでもいい」と思いたいのに、思いきれない。でも、変わる勇気もない。こういう状態の、一番根本にある問題は何なのでしょうか。私は、「自分をあるがままに受け止められていないこと」が原因だと思います。
心理学では「健全な自己愛」という概念があります。これは、自分を過大評価することではありません。ありのままの自分を、「まあ、これでいい」と引き受ける力のことです。自己愛が安定している人は、他人と過剰に比較しませんし、「もっとちゃんとしなきゃ」と自分を追い込みすぎることも少ないとされています。
逆に、この土台が揺らいでいると、人は常に他人軸で自分を見てしまいます。 「このままじゃダメなんじゃないか」「何か変わらなきゃいけないんじゃないか」そうやって、今の自分を否定しながら焦り続けます。でも、ここで少し立ち止まってほしいのです。「このままでいいと思いきれない」なら、その思いきれない自分を、まず受け入れればいい。「変わる勇気がない」なら、その勇気のなさを、否定しなくていい。
変わりたくなければ、変わらなくてもいいのです。思いきれないなら、思いきらなくていい。大事なのは、「こうあるべき」に無理やり自分を合わせることではなく、今の正直な気持ちを観察することです。「あるがままの自分を受け止める」ためには、「自分のあるがままの気持ち」をまず知ることが必要ですから。
そのためには、自分の心の状態を、つぶさに観察して、感じていることをそのまま書き出してみましょう。「このままでいいと思いたいのに思えない」「変わるのも怖い」「グジグジしている自分が嫌だ」そう思うのなら、そのまま書けばいいのです。きれいにまとめる必要はありません。日記でも、メモでも、スマホのメモ帳でも構いません。毎日でなくても、モヤモヤしたときだけでいいです。
書くことには二つの効果があります。一つは、頭の中の霧を外に出すこと。もう一つは、自分の気持ちを、俯瞰で見られるようになることです。感情を言語化することで、情動の強さが和らぐことは研究でも示されています。霧の中にいるときは何も見えず不安ですが、輪郭が見えてくると、「なんだ、こういうことか」と少し安心できるものです。
カウンセリングには「傾聴」という技術があります。誰かが話をじっくり聴き、共感することで心が整理されていく。書くことは、それを自分で行う作業に近いのです。そして、不思議なことに、書いているうちに小さなアイデアが浮かぶことがあります。
「これならやってみてもいいかも」「今日は疲れているだけかもしれない」
何も浮かばなければ、「今日はここまで」と書いて終わればいい。それも立派なセルフケアです。そして気づいたときには、「変わる勇気」を探さなくても、小さな一歩が自然に出ていることがあります。
