年齢を重ねるにつれて、「このままでいいのか」と焦りを感じたり、理由もなく気持ちが沈んだり。そんな行き場のないモヤモヤを抱えているのは、あなただけではありません。
人生に迷ったとき、心を少し軽くするヒントとは――。Xフォロワー39万人超の精神科医・Tomyさんの著書『人生迷子 立ち止まったときの処方箋』(ワニブックス刊)より、一部抜粋してお届けします。
人生迷子は、一生懸命に生きてきた証拠
毎日忙しく、やるべきことをきちんとこなしている。仕事もそこそこにできているし、生活も回っている。はたから見れば、何の問題もないように見えるかもしれない。でも、ふとした瞬間に、こんな思いが頭をよぎる。「私、このままでいいのかな」と。それが、人生迷子です。もし、そんなふうに感じていたとしても、それはあなたが弱いからでも、要領が悪いからでもありません。むしろ、毎日を真面目に、一生懸命に生きてきたからなのです。
人生のどこかのタイミングで、ふと立ち止まってしまう。これは特別なことではなく、誰にでも起こりうることです。人生の後半戦に入り、体力が落ちてできることが減っていく不安もあるでしょう。でも、あなたが抱えるそのモヤモヤは、決してあなただけのものではありません。この本は、そんな「人生迷子」な、あなたのための処方箋です。
モヤモヤから抜け出すカギは「頭をお暇」にしないこと
人生についてじっくり考えたいのに生活は止まってくれない。なんとなく時が過ぎることに焦る。人って、どうしても目先のことに反応してしまうんですよね。しかも、日々の生活は忙しい。仕事では次々にやることが出てくるし、プライベートでも、細かい作業や用事が絶えません。毎日の家事やルーティンだけでも、結構な労力です。そこに、トラブルやイレギュラーな出来事が重なる。それだけで、もう一日分のエネルギーを使い切ってしまいます。
「やらなきゃいけないこと」をこなすだけでグッタリするのは、あなたが弱いからでも、要領が悪いからでもありません。誰にでも起こることです。むしろ、真面目な人ほど、「これでいいのかな」「あれは大丈夫だったかな」と、気になることが次々に浮かんできます。そうすると、ただでさえ忙しいのに、頭の中まで休まらない。
結果として、「考える時間が取れないまま、時間だけが過ぎていく」そんな感覚を抱くようになるのです。
じゃあ、どうすればいいのでしょうか。
まず、一つだけ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。人生って、そんなにじっくり考えなければいけないものなんでしょうか。おそらくあなたが本当に求めているのは、「正しい答え」ではなく、「自分なりに納得できる人生」なのだと思います。だからこそ、ちゃんと考えたい、間違えたくない、そう思っているのではないでしょうか。
私はよく「頭をお暇にしてはいけない」という話をします。ここで言う「頭がお暇」とは、目の前の状況から離れて、あれこれと別のことを考え始める状態のことです。たとえば、掃除をしているとき。本当は掃除をしているはずなのに、ふと、会社の人間関係のことを考え始めたり、将来の不安が浮かんだりする。そんな経験、ありませんか。
実は、これには医学的な背景もあるのです。慢性的なストレスや疲労が続くと、脳の前頭前野[ぜんとうぜんや](考えをまとめたり、長期的な視点で物事を見る部分)の働きが低下しやすくなります。すると人は、目の前の作業から離れた「答えの出ない考え」を反芻しやすくなるのです。これは意志の弱さではなく、脳の自然な反応です。
だから一度「頭がお暇」になってしまうと、人は考え事モードに入り、答えの出ない問題を、延々と考え続けてしまいます。答えが出ることなら、答えが出た時点で考える必要はなくなります。でも、人生や将来の不安は、そう簡単に答えが出ません。そうやって考え続ける時間は、残念ながらほとんどの場合、ネガティブな方向に傾いていきます。
この視点で見ると、「日々のことに追われて、考える時間がない」という状態は、実はそれほど悪いものではないのです。
「じゃあ、このままでいいんですね」
そう言いたくなるかもしれません。でも、そう簡単には割り切れませんよね。もし本当にこのままでいいと思えているなら、そもそも、こんなふうに悩んではいないはずです。ここまで読んで、「理屈はわかるけど、それでもモヤモヤする」と感じている人もいるでしょう。
このモヤモヤの正体は、「人生についてじっくり考える時間がない」ことではありません。本当の原因は、「自分が納得できるように行動できていない」という感覚なのです。忙しいかどうかよりも、考えているかどうかよりも、「これは自分が選んだ行動だ」と感じられていないことが、心を落ち着かなくさせるのです。ではどうすればいいのでしょうか?
大切なことは「じっくり考えること」より、短い時間でも良いから、「動きながら考えること」です。考えごとだけをし続けると、頭がお暇になって良くない。だから、考える時間はむしろ短いほうがいいのです。その代わり、こまめに動きながら考えましょう。または「何かを考える」のではなく、「何をするのか決める」。それなら、考え事は「何をするのか」だけになります。
決めてしまえば、あとは行動するだけ。そう考えれば、「答えの出ない考え」を防止することができますよね。
