それを見たときに、「おもしろい」という気持ちと、「これって一体何なんだろう」という、ある種の違和感や憤りを覚えました。本来の選挙って、日々の暮らしに切実な悩みを抱えた人たちが、それを解決するために声を上げる場であるはずじゃないですか。でも、現実の選挙システムは、肝心の「一番困っている人たち」が現場に関わることすら難しい構造になっている。だからこそ、このドラマでは現実の偏りに対するアンチテーゼとして、本当に切実な課題を抱えた普通の生活者たちが集まってくる物語にしたかったんです。
あかりの周囲にどんな仲間がいたら面白いかを蛭田さんが広げてくださり、今の4人(茉莉・あかり・五十嵐・蛍)の構成に固まっていきました。仲間一人ひとりが抱えるバックボーンや社会課題を深掘りしていく構成になったのは、私が現場の空気から感じた疑問や違和感が、作品の骨組みに大きく影響しているからだと思います。
まんじゅうはNG? 取材してわかった“膨大なグレーゾーン”
――実際に取材をされた上で選挙事務所「あるある」も細かく描写されていますね。
例えば、どの選挙事務所に行っても、「出してはいけないお菓子」といったNGリストが貼ってあるんです。公職選挙法の「通常提供されるお茶菓子はOKだが、軽食に該当するものはNG」というルールのせいなのですが、その基準が事務所によって全然違う。まんじゅうがOKのところもあればNGのところもある。「じゃあバナナはどちらなんだ」というように、解釈次第なグレーゾーンのルールが膨大に存在します。
インターネット選挙の問題もそうですよね。テレビは公職選挙法と放送法で秒単位の厳格な管理を求められるのに、ネットは基本的に自由で、各候補者を平等に扱う縛りもない。それって本当にあり得ないな、という憤りの方が大きくて。これをただうまく茶化すのではなく、「おかしいよね」という問題提起はちゃんと提示したい、というお話を蛭田さんにしていました。
――公職選挙法をはじめ、法律や社会システムをエンターテインメントに落とし込む際、佐野さん自身が大学で法学を学ばれたバックボーンが下敷きになっている感覚はありますか。
私、ずっと弁護士に憧れているんです。なりたかったけれどなれなかったものとして自分の中に存在していて。日本は法治国家で法律は便利ですが、私たちが生きていく上で法律は「ベスト」ではなく、ただの「ベター」だと思っています。だからこそ常に疑いを持たなきゃいけない。でも同時に、法律によって守られるものや、うまく使えるシステムもある。だからこそ「みんなもっと法律を知った方がいいよ」と思うんです。
――近頃の国会を見ていると、丁寧な議論を経るのではなく、数の暴力のようにいつの間にか社会のルール変更が進んでいってしまう恐怖や脆さも感じます。
社会の変化に合わせて、法律もルールもみんなで議論してアップデートし、マッチさせていかなきゃいけない。一番怖いのは、私たちが「知らないうちにルールを変えられていること」です。本来ルールは、その下で生きる国民のために変えるべきもののはずですから。
