こういうことを言うと、また「綺麗事だ」と言われるのかなと思って今まではあまり表立って言わずにきた部分もありました。でも、今の社会状況を見ていると、もう「そんなことを言っている場合じゃないな」という思いが勝って。

 実は、まさにこのドラマの最終回には「勝手にルールを作られることに対して、みんなで声を上げよう、ちゃんと議論をしよう」というテーマを据えています。そこがどういう風に響くか、どんな反響が来るかはすごくドキドキしているところですが、ごまかさずにしっかりと描きました。

大きな政党は「団体の代表」に話を聞きに行くが…

――第7話の障害者やエッセンシャルワーカーの方々へのヒアリングシーンは、観ていて胸が熱くなるほどのリアルさがありました。あのセリフやキャスティングの裏側には、どのような取材があったのでしょうか。

 実は、もともとの脚本には細かいセリフは書いていなかったんです。「就労継続支援B型事業所でヒアリングをしている茉莉(黒木華)とあかり」というト書きがあるだけで。そこで何を喋るかは監督や演出部が頑張って考えてくれました。その際、当事者の方に取材した言葉を私たちがセリフに直して役者さんに喋ってもらうくらいなら、もう「当事者の声をそのまま生かす方がいいんじゃないか」という話が制作チームの中で持ち上がって。

 結果的に、実際に当事者の方にそのまま出演していただいたり、ロケ場所も本物の施設を使わせていただいた描写も複数ありました。聾者の方々に関しても、もともと聾者指導の方がついてくださっていたので全面的に協力していただき、「どういうシチュエーションで、どんな質問をしたらいいか」をすべてヒアリングして、それをそのまま再現していきました。

 私が実際の選挙取材で疑問に思っていたことの一つに、大きな政党の人たちはみんな「団体の代表」に話を聞きに行く、という偏りがありました。だけど、代表が考えていることと、現場の一人が考えていることって全然違いますよね。テレビ業界について聞かれて、各局の社長が答えるのと、現場の私たちが答えるのとでは全く内容が違うであろうように。

 団体の代表にしかヒアリングしなければ、個人の切実な困りごとに手が届かない。だからこそ、組織のトップではなく、そこにいる「一人の人間」にちゃんと向き合う政治家としてあかりを描きたかったんです。

――政治ドラマというと、どうしても「保守VSリベラル」のような左右の思想対決になりがちですが、本作はそれを徹底して回避し、私たちの生活と地続きの物語として描かれています。企画の段階から、スタッフ間でどのような共通認識を持たれていましたか。

 メインスタッフには最初に自分の政治的スタンスを伝えた上で、「今回は自分の思想の正しさを証明するためにこのドラマをやるわけではない」ということを明確に提示していました。少しでもエンタメの中で見えすぎていたら、遠慮なく指摘してほしいと頼んだくらいです。

 期間中、さまざまな政治ニュースがある中で、右か左かではなく「この政策って筋が通っていないよね」「これによってどんな人が虐げられるか」ということを徹底的に話し合いました。イデオロギーではなく、生活者としての視点で扱える課題をすくい上げていったつもりです。

次のページ 「これだけは譲れない」と決めていたこと