兵庫県赤穂市で受け継がれる「雲火焼(うんかやき)」は、一度その作り手が途絶えた後復元されたことより“幻”とも称される焼き物。2011年にオープンした「桃井ミュージアム」は、雲火焼とともに兵庫県の伝統工芸品に指定されている「赤穂緞通(だんつう)」も展示されその魅力に触れることができます。ロケーション抜群のカフェや、ミュージアムの随所に散りばめられた創意工夫など、合わせてチェックしたい見どころも満載です。

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幻の焼き物復元への旅は、偶然の出会いから

 さかのぼること約40年。造園業を営む長棟州彦さんが偶然粘土質の土を発見したことをきっかけに雲火焼復元への物語は始まりました。雲火焼とは、江戸時代後期に陶芸家・大嶋黄谷により完成された焼き物。陶土や焼成方法などの陶法は継承されることなく途絶えてしまい、“幻”と呼ばれるようになったのだそう。

 土の情報を調べていくうちに、雲火焼の存在、そして多くの陶芸家が復元を試みるも成功した事例がないことを知ります。州彦さんは自宅でドラム缶の窯を用い独学で焼き物の研究を開始し、試行錯誤を重ねる日々を送りました。

 現在桃井ミュージアムの支配人を務める光亮さんは、当時を振り返りながらきっかけとなる出会いを語ります。

「転機となったのは父・州彦が地元の陶芸サークルの作品展に訪れたことでした。サークルの代表を務める桃井香子さんに『また遊びに来て下さいね』と言われたことを真に受けて、なんと翌朝に桃井さんの自宅へ焼き物を持参し現れ、研究内容を熱く語ったそう。その行動力が功を奏したのか、結果的に二人は20年近くかけ雲火焼の復元に奮闘することとなりました」

 雲火焼の最大の特徴は、釉薬をかけずに窯の中の煙と炎だけで色付けされること。灰色一色の粘土が、窯に入ると煙と炎によって朝焼けや夕焼けを思わせるグラデーションへと焼きあがるーーその絵柄はどれひとつとして同じ物はなく、完全に窯任せなのです。

 焼き方に対する文献がなく、雲火焼の特徴となる趣ある朱色や黒色の色合いを出すまでに苦労を重ねたそう。

「実際にやってみると、微妙な温度管理も必要となることが分かりました。当時は温度計もない中、陶工の腕がいかに優れていたか伺えます」

 煙と炎が織り成す唯一無二の色彩は、2人の陶工による探求によりその息吹を吹き返したのです。

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