その場で決めた“エレベーターが壊れた”物件
恐る恐る資料から顔を上げたFさんに、不動産屋はバツが悪そうに言いました。
「それがですねぇ……ここ、エレベーターが壊れているんですよ」
「……それだけ?」
エレベーターの故障程度、少々期間を設けて修理すればいいだけの話では? 家賃を下げるほどのことなのだろうか? いや、もしかすると、そうした修理では直しきれないような大規模な改修が必要ということなのかもしれない。
「でも、階段で普通に移動はできるわけですよね?」
「ええ、それはもちろんです! ただ、こちらのお部屋は3階になってしまうので、お客様の場合ですと、その……」
不動産屋はFさんの荷物に目線を向けました。
「それは大丈夫です。それくらいなら全然問題なく上がれるので」
「失礼いたしました。そのほかご懸念点としては、ここにもありますように1階がオートロックではなく共有の鍵を使う仕様になっていまして――」
正直言って100点満点の立地ではなく、本当であればじっくり内見もしたかったそうですが、いつまでも元彼の家に物を置いておくこともできない事情もあって、結局Fさんはその場で契約を決めました。
