100年のときを経ても色あせない、ホワイトジュエリーの煌めき
第2章「独自のスタイルへの発展」では、ダイヤモンドやプラチナの存在感が際立つホワイトジュエリーを中心に展開。
1920年代末に制作された《コルレット》は、幾何学的なデザインと立体的な表現が際立つネックレス。ネックラインには円形と四角形のダイヤモンドが交互にあしらわれ、その間から9つの雫型のエメラルドが下がる。ここで使用されているエメラルドは総計165カラット。1935年のブリュッセル万国博覧会ではフランス館に展示され、大きな注目を集めたという。
男性的なアクセサリーであるネクタイを、ジュエリーとして再解釈した《ネックレス》は、ラウンドカットやバゲットカットなど合計958石、125カラットに及ぶダイヤモンドが用いられている。
胸元や背中、肩と自由に結び目の位置を変えることができる自由なデザインは、当時の女性がどのように装いに取り入れていたかを想像するのも楽しい。
世界を揺るがした経済危機が、ブランドの創造性を引き出す転機に
第3章「モダニズムと機能性」では、幾何学的な造形と機能性を兼ね備えた独創的なジュエリーを紹介している。
1929年の世界恐慌を契機に、ヴァン クリーフ&アーペルは抽象性と機能性を強調するモダニズムの美学へと方向転換をはかる。他にはない技術革新を追求し、さらなる創造性を発揮していった。
なかでも注目は1933年に特許を取得した「ミノディエール」。ケースを開くと蓋の裏側には鏡が仕込まれ、リップスティックやパウダーケース、ライター、タバコ、ノートといった女性の外出に欠かせない品々を収められるよう設計されている。
細々としたもので雑然としがちな従来のハンドバッグの欠点に対応する形で生まれたもので、さまざまな素材と技法を取り入れたミノディエールが誕生した。
1943年に発表された《カデナ リストウォッチ》は、南京錠にインスピレーションを得て生まれたリストウォッチ。二連のスネークチェーンと、斜めに傾けられた文字盤が特徴のデザインで、文字盤は着用者のみに見える構造となっており、手首をわずかに傾けるだけで時間を確認できる。
この章では、ジュエリーと同様の素材を使って作られた「オブジェダール」と呼ばれる装飾品や、木材を用いたリストウォッチなども展示されており、素材や表現の多様化がうかがえる。
また、ジュエリーでは珍しく自然光を取り入れた展示も行われており、邸宅ならではの環境の中で作品を鑑賞できる点も本展の魅力のひとつ。本館 北の間ではアール・デコ期の衣装も紹介され、当時の女性がジュエリーを手に取り、どのデザインを選ぼうかと思案する姿まで思い浮かぶようだ。
