150種類の香りの仕分け&YINDIGO氏の調整のあと、完成したフレグランスとは?
机の上には、天然精油のボトルと、香りをとじこめたプレパラート入りの小さなケースが何十段も積み重なり、それが何列も並んでいます。リラックスした雰囲気の中、そこからひとつ取って、ケースを開けて嗅いで仕分ける、その作業を繰り返します。香水でよく使われるローズやベルガモットはもちろん、食材も多数。ミントひとつでもペパーミントやスペアミント、ベルガモットミントなど多岐にわたります。ヒノキでも5種類ありました。
最初は蓋を開けるたびに「この香りいいな」「なんだか懐かしいな、何の香りだっけ?」とワクワクしながら作業を進めていたのですが、嗅いで分けて、嗅いで分けて、嗅いで分けて……えっ⁉ ケースの量が全然減っていない、これは想像以上に難を要する作業かもしれないと途中で少しだけ途方に暮れます。そのそばで、YINDIGO氏は時折「うんうん、これはいい匂いだよねー」と明るく言いながら、嗅ぎ終えた香りをひたすら分別しては新しい香りを次々と目の前に置きます。さらに嗅いで分けて、嗅いで分けてを続けるうちに、無の境地に。選別のために考え込んだり立ち止まったりすることはなく、香りの仕分けがすべて終了しました。ここまでおよそ1時間。
「はい、では第二審査をしましょう!」ということで、私が選んだ41種類を再度嗅いで、少し違うなと思ったものを外していきます。外したからと言って使わないわけではありません。外したものも「好きなもの」「それほどではないもの」の2つに分け、好みの強弱をつけます。
すべての香りを選り分けたあと、YINDIGO氏はそれらを調合します。私が香りを仕分けているときの様子から感じ取ったものや、さらに香りの個性をふまえて、それぞれの配分量を決め、チューニングしながら41種類すべてを使って香りを仕上げていきます。
41種もあるからこそ、それぞれの香りはあまりに微量で繊細な作業。でも、まるで薬剤師が処方箋に基づいて薬を調合しているように、完成形に向かって迷いなく作っているように見えました。「できあがりのイメージがあるわけではないんですよ~」とYINDIGO氏が笑いながら答えます。
私が選んだ香りと発した気配を丁寧に掬い取って調えたフレグランスは、ヒノキを中心にした森林を思わせるような香り。まるで自分の分身のような、間違いなく本能で好きと感じられる香りで、脳内のごちゃごちゃがいったんリセットされて、気持ちがすとんと落ち着く気がします。YINDIGO氏が少しだけ重めの香りを加え、彼女いわく「すーーっと先を見通せる香り」が完成。「高貴な香りがしますね~」とニコニコしながらフレグランスを詰めたスプレーを手渡してくれました。嗅ぐたびに、ニュートラルな自分に戻れて、飾らずに気負うことなく未来を進んでいこう、そんな風に思える一生ものの香りに出会えました。
文=CREA編集部 写真=佐藤 亘
