誰かの幸せを願う祝詞を述べること
情けない風呂上がり、カピカピのお肌の抱き心地はすこぶる悪い。別に普段がすべすべであるわけでは全くないのだが、自分が自分じゃないみたいだ。
ぎゅっと自分に手を添える。キメの荒い肌に爪が食い込む。自分自身の距離感すらもわからない。私なんか大嫌いだ。
ボタボタと、陰を落とす。こういう時の私の逃げ方は決まっている。
誰かの幸せを願う祝詞を述べることと、誰かの力になれる仕事に追われることだ。
自分のことで手一杯になるのが怖いから、意識を体外に向ける。誰かの役に立っている間だけは、そう勘違いできている間だけは、自分の存在を許せる気がする。1週間弱のその場しのぎとしては個人的最適解の認識だ。
生理症状というのは程度も内容も本当に人それぞれだから、相手のしんどさを慮ることはできても全く同じ気持ちになったり痛みを背負うことはできない。できると思ってはいけない。
これは自分に向けても併せ持つ発言である。誰かと比べなくていいし、「もっと大変な人がいる」なんてことはこの期間においては考えなくていいと思う。影山優佳の場合、生理期間は涙が出てきて、不安でたまらなくなる。ただそれだけの事実がそこにある。
生理が終われば、また私らしさに戻る
生理中は、心の引き出しが全部開きっぱなしになる。普段なら奥にしまっている不安や後悔まで、全部床に散らばる。整理しようとすると、断捨離の一歩目のように余計にぐちゃぐちゃになって収拾がつかなくなる。
ただ同時に、その二歩目は必ずやってくるのもまた事実だ。物量が落ち着いて、散らばって混沌としていた床の色が見えてくる。どこから手をつけたら良いかがなんとなく理解できるようになってくる。
生理が終われば、また私らしさに戻る。
一連の流れとしてまたどん底がやってくることは一度棚に上げて、より明るい明日が来ると思えると現状をもぬか喜びできるような気がする。そうとなったら今日は、これ以上足さないで、減らすべくの無駄な努力もしないで、静かに一日を終わらせようと思う。
現状維持が、とびきりの正解だ。
» 「恋愛トークするんで、若い女性代表として厳しく切り込んで!」影山優佳(25)が明かす10年目の葛藤。期待と自己認識がズレたとき、人はどうするべきなのか?
影山優佳(かげやま・ゆうか)
タレント。2001年5月8日生まれ、東京都出身。O型。2016年5月8日「けやき坂46(現・日向坂46)オーディション」に合格しデビュー。多くのバラエティ・クイズ番組でも活躍、MENSA会員になったことでも話題に。また『2022 FIFAワールドカップカタール』でコメントや予想で注目を集めた。2023年7月19日に卒業コンサートを開催し、グループを卒業した。現在はドラマや舞台など俳優業を中心に幅広く活動している。2026年7月、デビュー10周年の節目に初のエッセイ集『影まで愛して』を刊行。

影まで愛して
定価 2,200円(税込)
マガジンハウス
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)
