誰かが抜けたらまた新しい誰かが即座に座り満席になる
ほんで影山が女性を代表して、代表しているかのような口を聞いて、よく知りもしない目上の人に酷い口調で突っかかる。私が自分自身に貼っていたラベルとは、かなり遠い印象だった。この番組にはそのポジションが必要で、どうにかして云々かんぬんあって私の名前を挙げてもらった。
誰かが抜けたらまた新しい誰かが即座に座り満席になる。そんな椅子取りゲームのような世界で、人から求められる機会を一つもらえることがどれだけ幸運なことであるか。
期待してもらえるのは、嬉しい。
ただ、期待と自己認識がズレたとき、人はどうするべきなのか。10年もこの仕事をしてきて、25歳にもなって、一向に答えが出ない。期待に応えようとして、自分ではない何かを演じる。それが「プロ」である。
求められた役割を全うする、という意味では正しいのかもしれない。でも私の場合、それがうまくいった試しがない。無理に作った「らしさ」は画面越しでも伝わるのか、何が正解か全くわからないのに不正解を叩き出していることだけはわかる。そんな仕事ぶりばかりだ。
こういうとき、テロップになりやすい一言を澱みなく刺すことができる人だったら、私はどの世界線でもやっていけたのだと思う。場の求める温度をすばやく読んで、それに合わせた言葉を選んで、笑いか共感か驚きかを確実に届ける。
何もできないと思う瞬間が断続的に続き…
その能力は、生まれつき備わっている人がいて、訓練で身につけられる人もいて、私はたぶんどちらでもなかった。
だからといって、社会性もない。もっともっと誰かのためにならない。何もできないと思う瞬間が断続的に続き、引きで見ると一直線に支配している。私が仕事をいただけているのは、紛れもなく周りと縁に恵まれているからである。
自分を卑下したいわけではなく、事実を紹介したいわけでもない。
ただ、主観と客観の相違というのは、思ったよりも深い溝で私たちをいつも悩ませる。そして相手の期待に全力で応えようとすることと、自分の実像から遠ざかっていくことは、時に全くの同義となって私の前に立ち塞がる。
期待の型に無理やり自分を当てはめて、それも私だと思い込ませることが必ずしも私の正解ではないのだとも、思えるようになってきた。
それから10年が経った。
「できる限り頑張ります」
咄嗟に出た返事がそれだった。期待してくれた相手を失望させる、次はなくてもいいですとでも言うようなたいそう情けないお返事だ。そして私は私に「やるやん」と伝えた。誰かに期待をかけてもらえることは、心の底から嬉しく光栄なことである。私が私らしくあることは、私の幸せを願ってくれる大切な人の期待に応えるということだ。できないことをできると言わない。でも、できることは必ずやる。それが私の「かっこいい」だということにしよう。
私って、こんなもんよね。
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影山優佳(かげやま・ゆうか)
タレント。2001年5月8日生まれ、東京都出身。O型。2016年5月8日「けやき坂46(現・日向坂46)オーディション」に合格しデビュー。多くのバラエティ・クイズ番組でも活躍、MENSA会員になったことでも話題に。また『2022 FIFAワールドカップカタール』でコメントや予想で注目を集めた。2023年7月19日に卒業コンサートを開催し、グループを卒業した。現在はドラマや舞台など俳優業を中心に幅広く活動している。2026年7月、デビュー10周年の節目に初のエッセイ集『影まで愛して』を刊行。

影まで愛して
定価 2,200円(税込)
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