初めて、受け手として演じた
――そして、満を持しての劇場映画初主演作『四月の余白』では、元半グレ・元受刑者という過去を持ちながら、全寮制の更生施設を経営する主人公・西を演じられています。
西を演じるうえで大切にしたのは、更生施設の子たちを心から愛するというか、「この子たちを幸せにすること。見捨てないこと」。これしかなかったですね。
今作は𠮷田(恵輔)監督の実体験も投影されているようで、役作りの段階でいろいろと怖い話をお聞きしましたが、現場はとても空気の良いチームでした。ただ、監督からはセリフの滑舌が良すぎると、注意されましたね(笑)。
――本作のキャッチコピーである「ひとは変わることができるのか。ひとはひとを変えることができるのか」について、一ノ瀬さんはどのように思われますか?
僕は、自分の中でルールさえ決めることができれば、人は変われると思っていますし、変えることもできると思っています。
というのも、僕がかつて内弟子をしていた「真樹ジムオキナワ」は空手道場もやっていて、そこにはどうしようもなく手がつけられない子どもたちもやってきていたんです。空手は、体罰ではない「痛み」を知ることができる競技でもあるからか、その子たちはちゃんと更生していきました。そういう光景を間近で見てきたからこそ、人はきっと変われるはずだと信じています。
――本作は、一ノ瀬さんのどのような新しい一面が見られる作品になっていますか?
正直、初主演映画だからといって、「一ノ瀬ワタルの新たな一面を見せてやろう」みたいなことは、まったく意識しませんでした。ただ、これまでは「自分がいいスパイスになって、このシーンを強烈に面白くしてやるぜ!」と思って演じることが多かったのですが、𠮷田監督に初めてお会いしたとき、「今回はいつもの濃い味の一ノ瀬さんじゃなくて、色々な共演者を受け止める『受け手』としての一ノ瀬さんを見せてほしい」と言われたんです。
監督のその言葉があったからこそ、いつもとは違うアプローチになったので、結果的に、今まで観たことのない一ノ瀬ワタルが見られる作品になっているかもしれません。
――最後に、今後の目標や展望を教えてください。
やっぱり、一番やりたいのは「サンクチュアリ -聖域-」の続編ですね。以前は、「どんな役でも器用にこなせる俳優になりたい」と思っていた時期もありました。でも、この世界には本当に天才というか、素敵な役者さんがたくさんいらっしゃいます。最近になって、自分はいわゆる「カメレオン俳優」にはなれないなと気づいたんです。
僕はあくまでも「いびつな形のピース」で、どこにでもピタッとハマるわけではない。けれど、このいびつなピースだからこそ、絶対にカチッとハマる役が必ずあると思うんです。そこにハマったときは、もうどこまでも貫いて、誰にも負けない唯一無二の俳優になりたいですね。
一ノ瀬ワタル(いちのせ・わたる)
1985年7月30日生まれ。福岡県出身。プロの格闘家を経て、俳優の道へ。「HiGH&LOW」シリーズ(15年~)や『宮本から君へ』(19年)などを経て、Netflix配信ドラマ「サンクチュアリ -聖域-」の主演に抜擢。今年は『炎上』のほか、『キングダム 魂の決戦』(7月17日より公開)にも出演している。
『四月の余白』
全寮制更生施設「みらいの里」を運営する、元半グレで元受刑者の過去を持つ西健吾(一ノ瀬ワタル)。自身の体験を糧に、道を踏み外しかけた子どもたちに体当たりで向き合う彼だったが、体罰も辞さない更生方針は教育関係者から批判されていた。ある日、彼は中学校教師の冬子(夏帆)から、手に負えない生徒・海斗(上阪隼人)と鑑別所帰りの悠(和田庵)について相談される。海斗の激しい家庭内暴力に疲れ果てた母親は、息子を「みらいの里」に託すことを決めるも、海斗は施設でも寮生とトラブルを起こして脱走。さらに、傷害事件で逮捕されてしまう。
6月26日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
https://shigatsu-yohaku.com/
監督・脚本:𠮷田恵輔
出演:一ノ瀬ワタル 夏帆 上阪隼人 篠原 篤 占部房子ほか
配給:アークエンタテインメント
