今年の8月に誕生した、女性のデリケートゾーンや外陰部の構造を学べる、性教育用パペット「ばあばるば」。“自分とカラダに本音で向き合う”をコンセプトに、記事展開とアイテム販売をしているランドリーボックスが企画・制作し、話題になっています。
「ばあば(おばあちゃん)」が作る「バルバ(女性の外性器を表す英語)」で、「Ba-Vulva(ばあばるば)」。企画の立ち上げから制作までの経緯、現在の反響などを代表の西本美沙さんに伺いました。
意外と知らない女性器の構造を、立体的に説明できるものが欲しかった
――このアイテムが誕生したきっかけを教えてください。
西本さん 私たちの会社は、女性の体や性に関する記事を発信しているのですが、それに関連して、編集部で読者イベントを主催しているんですね。その際に、プレジャートイの使い方や体の構造を説明するシーンがあり、これまではイラストを描いたりしていたのですが、皆さんピンときていなくて……。そもそも、自分自身の外陰部を見たことがない人が結構多いんですよね。でも自分の体のことなので、ご自身がしっかり理解する必要があると思っていて、「そうなるとやっぱり立体的な構造のものが必要だね」と社内外からも声が出ていたんです。
それで調べると、海外にはパペットやプラスチック製の模型のものがあって。でも日本にはないから、作ってみよう! となったのが始まりです。それで、私の母と祖母に頼みました。
――お母さまとおばあさまに頼まれたんですね!
西本さん 実は、現在販売しているものは私の祖母や色んなばあばが作っているんですが、プトロタイプを作ってくれたのは、母と祖母です。今のものとはちょっと違う、ベロア素材のものを作ってもらったのですが、社内メンバーやいろんな人に「めちゃめちゃわかりやすい!」と大好評だったんです。それが2年くらい前で、素材を変えて、祖母にお願いしたのが今年の初めです。
――おばあさまに頼んだのはなぜですか?
西本さん もともと長年、洋裁師をして生計を立てていた人なんです。今93歳で、ちょっと記憶とかはふんわりしてきた部分もあるんですが、作業のときだけはピシッとするんです(笑)。古い工業用ミシンを持っていて、作業のときは目つきが変わって、絶対機械を触らせてくれないんです。職人に戻るんでしょうね。祖母のそういう姿も見たいと思い、「やはり祖母にお願いしたいな」と最終的に思いました。
――すごいですね! おばあさま、お母さまに最初、「このようなものを作ってほしい」とお願いされたときは、驚かれたりしませんでしたか?
西本さん 母に関して言えば、私がずっとこのような女性の体や性に関しての仕事をしているのを知っていて、その内容も共有していたので、「突飛なことを言ってきた」とは決して思っていなくて。母自身が弁護士事務所で働き、労働環境における男女平等を訴える活動にも参加していたがあり、私の仕事に関しても「女性の解放活動だね」と共感してくれています。
祖母は、母から相談された時は驚いていたそうですが、孫からの依頼とわかると、「また美沙がなんか言うとるんか。ほんならやるわ」って感じでした(笑)。私がデザイン画を描いて、伝えて。ただ、祖母はちょっと認知症があるので、毎回説明してるんですけど、忘れちゃうんですよ。なので、毎回、「性教育で使うんだよ」「誰が使うんや?」を繰り返しながら、婦人科の先生が発信している動画を一緒に鑑賞したりもしています(笑)
このアイテムの制作を通して嬉しかったのは、祖母と性教育や生理の話をすることができるようになったこと。男女分かれて生理教育されていた、生理用品のつけ方も教わった、でも今みたいなちゃんとしたものではなかったなど、今よりもっと苦労していた時代の話や、祖母がどのような生活をしてきたかを聞いて、この時間がとても貴重だと感じています。
――すごく良いお話ですね! 確かに、自分の祖母の時代のそういう話は聞いたことないです……。
西本さん ですよね。現在、うちの祖母と母、あと二人、知り合いのおばあちゃんと計4人で作ってくれているのですが、いろんな形で携わってくださる方が増えて、世代を超えていろんな輪が繋がっていくといいなと思っています。
2024.12.11(水)
文=増本紀子(alto)
撮影=深野未季