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ハラスメントが起きないよう、現場で工夫していること

――津田さん自身は今、プロデューサーとして現場でハラスメントが起きないようにどんな工夫をされているんでしょう?

 あまり長い間、固定のスタッフで一つの番組を回さないようにしています。バラエティ番組は、作って放送さえしてしまえば、座組を変えられるんですよ。現場で相性が悪い相手がいても、「あと◯日で、このチームでの仕事は終わり」と思えば耐えられるところもありますよね。

――バラエティの現場は通常、ある程度固定のメンバーで回すことが多いですよね?

 多いです。どういうふうにテロップを入れるか、ナレーションの人にどう原稿を読んでもらうかとか、番組ごとに決まり事がいろいろあるんですよ。それに慣れたスタッフが集まっているほうが、話が早くて楽です。だけど人間関係は慣れ親しんでしまうと悪い面も出てくるから、シャッフルしないとダメなんですよ。

――つまりその分、作業としては大変になるということでは。

 本当にそう(笑)。でも解決策としてはこれなんです。タレントさんのキャスティングでは毎回その作業をやっているんだから、なんでスタッフィングでもできないの? って話なので。

――テレビ業界でハラスメントが起きやすい要因として、構造的な問題もあると思います。テレビ局と制作会社のパワーバランスだったり、フリーランスや非正規雇用で働く人の多さだったり、権力勾配が大きくなりやすい労働環境ですよね。

 めちゃくちゃそうですね。制作会社は奴隷です(笑)。みんなが観ているコンテンツの背景には、そういう構造が縦糸として存在しています。

――これは是正可能なものなんでしょうか。

 どうかな……可能だとは思うけど……。今、テレビ局は広告収入が減って業績が落ち込んでいますよね。このまま力がどんどん弱くなっていったら、そこも変わるかもしれません。

――だとすると、まだ時間がかかりそうですね

 10年いただければ、いけるんじゃないかな。

――なぜ10年?

 世代交代が進むから。いや、意外とそれに尽きるんですよ。下の世代の人たちは「時代に合わせてやっていこうよ」みたいな気持ちになってきていると思います。

 テレビ局に入る人ってやんごとないから、優しいし日和見なんですよ。「戦ってまで変えるのはちょっと……」って思ってる。だから上の人たちが辞めたら、日和見が良いほうに働いて自然と変わると思います。あとはAmazonやNetflixのような外の存在がもっとゴリゴリ来てくれたら、変わらざるを得ないでしょうね。

 私の肌感覚では、そういうふうにしか変化は起こらないと思います。だけど、その中にあってもちゃんと届けるべき番組を届けたいですね。そのためにテレビ局の中でもちゃんと話せる人を見つけることは、諦めちゃいけないなと思ってます。

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津田 環

テレビマンユニオン所属。AbemaTVNewsチャンネル「Wの悲喜劇」プロデューサー。「オオカミくんには騙されない」初代プロデューサー、「世界ウルルン滞在記」など海外取材の制作も多数。

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Column

テレビマンって呼ばないで

配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

2024.11.07(木)
文=斎藤 岬
写真=杉山拓也