狂気的すぎて存在自体に恐怖を覚えるレベルなのですが、もうそのキャラ造形が行きすぎてしまっていて、最高にバイオレンスな映像が流れるのに、なんだか笑えてくるシーンがあるのです。

 物語後半、ある裏切り者をハリソン自らが処刑する際、この名言が飛び出します。

「もっともフィジカルで、もっともプリミティブで、そしてもっともフェティッシュなやり方でいかせていただきます」

 この3つのカタカナが示す殺し方、おわかりになるでしょうか。

 正解は、“顔をひたすら踏み潰す”です。

 自らスマホで撮影しながら、裏切り者の顔面を硬いウエスタンブーツのかかとで踏みつけること16回。あたりは血の海、顔は半壊。そして恍惚といえる表情を浮かべるハリソン。

 過激な描写が多い「地面師たち」のなかでも、ショッキングさでは屈指のシーンと言えるのですが、ハリソンのセリフがなんだか中二病っぽいので、目を背けたくなるシーンながら、もはや笑えてくる不思議。

 そして、肝心の“観るべき理由”ですが、ハリソンのこのセリフは視聴者の脳裏にこびりついて離れないインパクトがあり、すでにミーム化しているので、本作にハマった人ほどつい使いたくなりがち。元ネタをきちんと知っておくという意味で、観ておくべきなのです。

観るべき理由2:“転落”する高慢ホストの“クズキャラ”っぷり

 本作には地面師チームの面々以外にも、どこかネジがブッ飛んでいる人間性がイビツなキャラクターが続々と登場してきます。

 たとえば、地面師たちに騙される張本人であり、異常なまでの出世欲で時代錯誤のパワハラ発言を連発する最大手デベロッパーの部長(山本耕史さん)。また、市場価格100億円超の土地を持つ大地主で、由緒あるお寺の住職でありながら、色欲に取り憑かれてホストとの複数プレイに没頭する尼僧(松岡依都美さん)。

 こういったバイプレイヤーが入り乱れているのですが、チープな振る舞いとゲスな思考で一際きらりと輝いたのが、吉村界人さん演じる歌舞伎町のNo.1ホスト・楓でした。

2024.09.30(月)
文=堺屋大地