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“可愛い”に偏らないように情報を発信

 今回紹介した中でパンダから最も遠い部署が教育普及課(正式名称は「公益財団法人東京動物園協会 恩賜上野動物園 教育普及課」)。3つの係で構成され、子供動物園係を除く2つの係がパンダに関係します。

 1つは管理係で、事務系の職員6人が所属。動物園の組織がうまく回るように調整したり、広く意見を聴いて改善につなげたりします。2021年に実施した双子のシャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)の名前の公募では、東京都との調整や「名前候補選考委員会」の運営を担いました。

 もう1つの係は、動物と動物園の情報を発信する教育普及係。事務系2人、生物系7人の職員と、動物解説業務の3人、デザイナー1人が所属し、環境学習プログラムの作成や報道対応などをしています。シャオシャオとレイレイの誕生に際しては2カ月ほど前から準備。2021年6月23日未明(1頭目が午前1時3分、2頭目が午前2時32分)に生まれると、午前中に記者会見を開きました。

 パンダの情報はSNSでも発信しています。ただし「あまり“可愛い”に偏らないように、動物園として必要な情報をきちんと出すようにしています。パンダは非常に注目される動物で、コンテンツとしての力があることを意識しつつ、バランスの取れた発信をするようにしています」(大橋直哉教育普及課長)とのことです。

 このようにさまざまな職種の人たちが、来園者から見える所・見えない所でパンダに関わり、パンダの暮らしを支え、パンダと来園者をつないでいます。動物園を訪れたら、こうした仕事にも思いを巡らせてみると楽しみ方が広がるかもしれません。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

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2024.03.17(日)
文・撮影=中川美帆