現在開催中の「陰陽師とは何者か」展。
「陰陽師」ブームを牽引する夢枕獏氏と、シリーズの大ファンでもある澤田・武川・蝉谷氏とともに、陰陽師の魅力を語り尽くす。


写真◎山元茂樹

 
 

展覧会名:企画展示「陰陽師とは何者か―うらない、まじない、こよみをつくる―」
会期:2023年10月3日(火)~12月10日(日)
会場:国立歴史民俗博物館
https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/index.html


陰陽師の魅力を伝える資料
夢枕獏さん
夢枕獏さん

 夢枕 今日、「陰陽師とは何者か」展を拝見して、僕が面白かったのは、平安時代の陰陽師の日記ですね。ディスプレイがタッチパネルになっていて、日付を押すと現代語で「今日はおじさんがケンカした」とか「鞍馬寺まで歩いて行った」とか書いてあって、人間の肉声が残っているのを楽しく拝見しました。

 澤田 私は晴明伝説の分布が興味深かったです。たとえば銚子の伝承では、土地のお姫さまが晴明を婿に取るんです。ただ晴明はそのお姫さまの容貌を嫌って、海際に草履をそろえ、身投げしたふうに装って逃げてしまう。お姫さまは「晴明さまが死んでしまった」と嘆いて、自分もと飛び込んで亡くなってしまう。彼女の死体が流れついたところに神社が作られ、そこに祈願をすると髪のちぢれや顔のあざなどが治るという(笑)。晴明という神秘的な存在とご利益の間に、かなりひどい逸話が混じっていて。

 夢枕 ひどい話だね(笑)。

 武川 私は戦国時代が好きなので、大坂冬の陣の後の、伊達政宗の、家康と秀忠の心の中の政宗に対する悪心を取り除けますようにという都状(とじょう)(伊達政宗泰山府君祭都状案)が、面白かったです。黄色い紙に陰陽師による祭文が赤字で先に書かれていて、自分の「政宗」という名前だけ書き入れればよいという形式が、すごくシステマティックにできているし、政宗も願掛けを頼りにしたんだなと。

2023.12.12(火)
文=「オール讀物」編集部