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ウシの本能を利用した闘い

 調べてみると日本の闘牛の歴史は長く、1178年には後白河法皇も観覧したという記録も。今では沖縄や新潟など数ヶ所に残るのみだが、かつては日本各地の村で娯楽として自分のウシを闘わせていたのだとか。

 小千谷の闘牛は江戸時代後期に書かれた「南総里見八犬伝」にも登場しており、「牛の角突き」という名で神事として今に受け継がれているそう。国の重要無形民俗文化財にも指定され、5月から11月まで毎月1回、行われる。

 さて、“開幕戦”に当たる5月5日のこどもの日、小千谷駅から東に車で20分ほどの山間部にある小千谷闘牛場へと向かうと、すでに道ばたのポールに闘牛たちがつながれていて「ヴモォ~!」と低い声で鳴いている。牧場にいる肉牛や乳牛と違って眼光が鋭く、筋骨隆々、遠目にも強さが伝わってくる。

 入場料は全席2,000円と映画代ほどで予約も不要。受付で渡される相撲の取組表のような赤い紙が入場券代わりなので、なくさないように。この日は16番の取組が行われるとのこと。円形の会場には屋根付きの観覧席と山の斜面を利用した青空席がある。

 北側の屋根付きの観覧席に座ると、隣の席の地元のおじさんが「おめさん、どっから来たの?」と、声をかけてくれた。おじさんによると、他の地域の闘牛では「逃げたら負け」で決着をつけるけれど、小千谷では全部、引き分けで終わらせるそう。かわいいウシたちが怪我をする前に引き離すのだとか。確かに流血大惨事、最後はめった刺しのスペインと全然、違う。

「そんでも最近は、ウシを闘わせること自体にクレームが来るみたいで。でも元々、雄牛は縄張り意識が強く雌牛を争って角を突き合わせて闘う習性があってよ。それを人間が利用して娯楽になったのさ」とおじさんは言う。

 この地域では、自分の闘牛を持つことは昔から憧れなのだという。牛持ちと呼ばれるオーナーは、個人や企業などさまざま。自分で育てる人もいるが、共同牛舎に委託して育ててもらう人も多い。毎日、散歩をしたり、体が強くなるエサを与えたりと、大事に育てているそうだ。

2023.10.28(土)
文・撮影=白石あづさ