令和仕様で再誕した栗せん

 復活した栗せんは、個包装になり洗練されたシックなパッケージに包まれています。

 白餡は北海道産の白インゲン豆(手亡豆)を使用、卵を増加し甘さを抑え、サクッと解けるような食べ応えに。まろやかで控えめな優しい甘さ、豆の味が通り抜けるような後味はそのまま残しながらも、以前より口当たりが軽くなったそう。

「スッと切れるような甘さと優しい後味が魅力です」(保坂さん)

 伝統の製法を残しながらも機械を変えたことで焼き上がりが変わり、パッケージも令和仕様に。こうした変化に長年愛してくれた地元の人々の反応はどうだろうかと、不安もあったそう。

 それでも、新しい栗せんを出した時、「懐かしい」「復活してよかった」「食べやすくなった」など、変わらず愛してくれることにホッとしたと言います。

 以前は、茶せんや洋菓子なども売っていたそうですが、リニューアル後は栗せんのみの販売に。栗せんの餡製造会社が作る、小豆の瓶詰め餡各種も販売しています。食パンとの相性も抜群なので、トーストに合わせてみるのもおすすめです。

 また、ほさかの店舗裏には、喫茶店やギャラリーがある中庭が。誰でも自由に入ることができるので、天気がいい日には、買ったばかりの栗せんをゆっくり食べるのも良いですね。

 「多くの方の応援や協力があり、お店を続けられ感謝しています。沼津銘菓『ほさかの栗せん』の名に恥じぬよう、創業100年に向けて頑張りたい」と晴れやかな笑顔で話す保坂店長。

 昔ながらの味や懐かしさを残したいと願いながらも、機械や店の老朽化は進みます。沼津の人たちからの声、そして創業者の知恵と栗せんへの愛を糧に、悩みながらも変わることを選び次の時代へと見事に生まれ変わったほさかの栗せん。

 店舗やパッケージは変化しましたが、豆と卵と砂糖だけというレシピは令和仕様になっても創業時から変わりません。長く愛される本物の味というものが、いかにして残っていくかを教えてくれるようです。

 これからもほさかの栗せんは、アップデートしながらも変わらず沼津銘菓として愛され続けていくのでしょう。

ほさか

所在地 静岡県沼津市大手町5丁目2−9
電話番号 055−951−1515
営業時間 11:00~15:00
定休日 水曜
https://hosaka-kurisen.com/

2023.09.03(日)
文・写真=神谷加奈子