時代に合わせ生まれ変わった「ほさかの栗せん」
栗せんに対する熱烈な声を受け「せめて創業100年までは続けたい、何とかできないか」と店長の保坂裕子さんは思いなやみます。
そんな折、創業者・保坂貢氏の孫である株式会社山野楽器代表の山野政彦さんが「祖父が作った栗せんを無くしたくない」と支援を申し出、新たに機械を導入できることに。栗せん消滅の危機を免れたのです。機械の導入とあわせて、店舗や商品パッケージも新装し、ほさかは2021年リニューアルオープンしました。
白を基調としたモダンな店舗に生まれ変わったほさか。飾り棚には創業当時の道具と、リニューアルした菓子箱が並びます。
以前は別の場所にある工場で製造していましたが、新装した店舗では店内に工場を構え、製造工程を見ることができます。
新たに導入された焼成機は、円筒形。機き型に栗せんのたねを乗せ、焼成機の中をぐるりと一周すると焼き上がります。焼き上がりまで約6分間と、製造時間が大幅に短縮されました。
焼成機から出るとプレスしていた焼き型が開き、創業当時と同じ栗の型で焼きあがったかわいいせんべいがお目見え。そしてベルトコンベアに流れていきます。
焼き上がった後からが、職人技の見せ場。1日およそ1000枚の栗せんを、一枚一枚手作業で美しく仕上げていくのです。
少しの水分量、天気、湿度、豆の状態……すべてが仕上がりにひびくため、毎日様子を見ながら微調整して作り上げます。丁寧に、丁寧に作る姿はまるで芸術作品を作っているかのよう。一枚一枚宝物のように扱う姿を見ていると、店舗に滞在するうちに見ているこちらも栗せんへの愛着が湧いてきます。
整えた栗せんを割れないように、箱に並べます。味のある木箱は以前から使用していたのもの。その後、一枚一枚包装し店頭に並びます。
2023.09.03(日)
文・写真=神谷加奈子