静岡県沼津市にある1928年(昭和3年)創業の老舗菓子店「ほさか」。

 創業当初から作る「栗せん」は、長年地元の人々や沼津土産として愛されてきました。しかし、機械の老朽化で2019年から製造を休止。生産は停止となり、一時銘菓は姿を消しました。

 しかし、消滅の危機を乗り越え、「ほさかの栗せん」は2021年販売を再開。昭和の時代から受け継いだ、白インゲン豆、砂糖、卵だけでできたシンプルで懐かしい味わいをそのままに、以前より軽い歯ごたえとモダンなパッケージへ。新たに愛される沼津のお菓子として生まれ変わりました。


沼津の老舗菓子屋「ほさか」

 沼津駅から徒歩3分、老舗菓子店「ほさか」は1928年、故・保坂貢さんが創業した老舗菓子店です。創業当初から販売していた栗の形をしたせんべい「ほさかの栗せん」は地元の人々に親しまれてきました。

 栗せんは白インゲン豆に砂糖を加えて作った白餡と卵というシンプルな素材で作ります。創業当初は炭火で、後に工場ができてからはガス火で、40分かけて仕上げていたといいます。長時間じっくりと焼き上げるため、生地が引き締まり、しっかりとした歯ごたえが人気でした。

 長年愛されてきた栗せんですが、機械の老朽化により製造が困難に。ついに2019年には店頭から姿を消してしまいます。

 すると「栗せん、もう残っていないの」と多数問い合わせが。沼津の人たちは栗せんがこたつの上にあることが日常なんだと口々に話してくれたと言います。

2023.09.03(日)
文・写真=神谷加奈子