宮藤さん、大石さん、どちらが書いたセリフなのか

──松坂さんは愛媛の三世議員・東海林大志役、仲さんは女優の黒澤ゆい役を演じられました。宮藤官九郎さんと大石静さんが描かれたキャラクターの印象は?

松坂 これまで宮藤さんからは童貞の小学校教師役(「ゆとりですがなにか」)、大石さんからは漫画オタクのポンコツな役(「あのときキスしておけば」)という、有難いことに変化球のキャラクターを振られてきまして。今回の大志役も、煩悩にまみれた男といいますか(笑)。ちゃんと期待に応えなきゃいけないと思いました。

 私は女優役を演じるのは初めてだったし、それが面白くもありましたね。大御所おふたりの世界観にどうやったら入っていけるだろうと思いながら演じました。

──宮藤さんと大石さんがどの部分を担当されているのか、おふたりはご存知でしたか?

松坂 最初は、現場でプロデューサーさんに「今日撮るシーンは宮藤さんですよね?」と、答え合わせ的な感覚で聞いたりしていたんです。でもだんだん話数が進んでいくと、その予想が外れていくんですよ。どちらが書いているかわからなくもなってくるし、融合し始めているなと思いました。

 ゆいと恭二(錦戸亮さんが演じる、ゆいと恋に落ちる色気ダダ漏れの自称アーティスト)とのシーンは、大石さんが書かれているんだろうなって思っていました。ちょっと不思議な感じの雰囲気だったし、「……」という間の感じとか、セリフの感じとか。

 大石さんも「私が恭二のシーンを担当しました」とおっしゃっていて。だからあんなにミステリアスになったんだなと思いました。

──不思議だと思ったのは?

 ゆいが恭二のことを「生きてるのに死んでるみたいな人」と言ったり、水を紙コップに注いだ恭二が「グラスって、あると壊したくなるから」と言ったり(笑)。恭二はちょっとナルシスト入ってるけど、それに気づいていなくて自然にやっている、嫌味のなさが最高でしたね。

──ドラマではゆいと恭二だけでなく、アナウンサーの三俣桜子と大志の不倫も描かれます。離婚に向かう夫婦を演じたとはいえ、お互いの不倫相手に嫉妬心が生まれたりしませんでしたか?

松坂 ドラマの中ではふたりの心が交わる瞬間も描かれるので、なんだかんだ大志はゆいのことが好きなんだなと思っていて。お芝居でその感情に乗っかると、やっぱり恭二の存在が気になったりすることはありました。

──仲さんは? 劇中では、ゆいは何度も三俣の存在に振り回されます。

 いやあ、面白かったですね(笑)。大志との不倫を踏み台にしてのし上がっていく三俣の上昇志向はすごいと思いました。

松坂 夜のレストランで、大志とゆいがお互いの不倫相手のことをグチるシーンがあるんです。離婚前提とはいえ、まだ夫婦なのにフラットにそれぞれの相手のことを話せる感じはすごく面白かったです。

 「あたしたち、誰かの悪口肴にしたら一生喋ってられるよね」って言うシーン(笑)。やっぱりグチを言い合える関係性って、夫婦にとって大事なことだと思うんです。そこで「君も悪いところあるじゃん」みたいにヒーローぶられると「ふん!」ってなっちゃう。

松坂 「僕はこうだと思う」とかね。

 そうそう。嘘でもいいから「わかる!」とその場で盛り上がれるほうが、近くにいる関係性としてはいいなって思いました。

2023.06.20(火)
文=松山 梢
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=猪塚慶太(松坂桃李)、番場直美(仲里依紗)
ヘアメイク=Emiy(松坂桃李)、本岡明浩(仲里依紗)