〆の「蒲焼」は、弾けそうなほど元気みなぎるウナ姿

 とうとう〆の「蒲焼」です。見てください、この堂々たる焼き色と躍動感あふれる肉厚さ。ぱちんと弾けそうなほど元気みなぎるウナ姿。地焼きなのかな? と思わせるほど炭火でがっつり焼いていますが、焼き方は関東風で蒸してから焼いているそう。テリッと甘そうな見た目ですが、タレは醬油の風味を心地よく感じるスッキリ系。

 ここまでがっつり焼いた蒲焼は、自分史上いちばんだったかも。蒸しの強い柔らかな蒲焼ではなく、ウナギ本来の原形を残しつつ、程よい蒸しでコラーゲンのねちっとした感じも引き出した絶妙な焼き加減。炭のほろ苦さ、香りをまとったそれは、山椒などの薬味を必要としないほど。

 コースでは「蒲焼」のお皿で登場しますが、ライスを追加注文し、小どんぶりにして食べる人がほとんどとのこと。ぜひ頼んでみてください。大雪山の名水で炊いた新潟県産コシヒカリは粒の立った最高の炊き加減で、みずみずしい米の甘さがウナギの力強い味わいをしかと受け止めてくれますから。

 充分満足! けれど、あんまりにも楽しい時間だっただけに、もう少し、あとちょっと食べたいという気持ちがむらむらと湧いてきます。今回はうな重ではなく、茶碗の小どんぶりだったのでおなかにも余力アリ。

 そこで1品、追加で頼んだのが「鰻竜田揚げ」1,100円。「かをり揚げ」の印象が強くて、揚げ物を再チャレンジしたくなったのだが、まったくの別物でした。サクサクの衣に包まれた身は、白身魚特有のほっくり感はありつつも、かみしめればねっちり。ウナギの身の強さを思い知らされる素敵な逸品でした。

 このコースのよさは、焼いたり煮たり、揚げたり、調理法によって食感や脂、身の旨みがいかに変化するのかを満喫できること。ウナギのとれない北海道で、ここまで楽しませてくれるとは、ちょっと意外な感じもします。

「初代である親父が店を開いたのは40年ほど前。物流が今ほど整っていない時代に、新鮮な物を提供するには?と考えた時、海から遠い旭川でもウナギなら活きたまま仕入れられる。それが旭川で鰻屋をオープンさせた理由のひとつだと、昔に言っておりました」と話す店主の門脇 章さん。

 コースは当日の14:00までに要予約。コースで出てくる料理はすべて単品で注文できますが、売り切れることも多いので事前の予約がおすすめです。ちなみに「うなぎ料理 7品コース」は、5品コースにうざくと吸いものがついて6,200円。「うな丼」は2,100円~、「櫃まぶし」4,250円も人気です。

【今月のウ話】

天然ウナギの生息地の北限は青森県といわれていましたが、2022年の夏、北海道の川でニホンウナギの稚魚や幼魚が相次いで発見されたというニュースが流れ、業界に大きな衝撃がはしりました。気候変動の影響で黒潮の流れや水温などが変化し、ウナギの回遊ルートが北上しているのか? と予測。絶滅の危機といわれて何年もたちますが、新天地の北海道でもたくさん増えて欲しいですね。ちなみに北海道では、かつてヤツメウナギがよくとれたそうです。エイリアンみたい口がかなり恐ろしいので、怖いもの好きな方は画像検索してみてください。

『うなぎ かどわき』

所在地 北海道旭川市2条通7丁目 プラネット2・7ビル1F
電話番号 0166-24-4282
https://h880700.gorp.jp/

嶺月香里(みねつき・かおり)

天然ウナギも泳いでいる東京の江戸川のほとりに生まれ、ウナギをこよなく愛するフードライター。レストランやレシピ取材のほか、漁港や食の生まれる工場まで、幅広く取材。ウナギ店めぐりは仕事を離れた趣味でもある。小学生の時に参加した地元のどじょうつかみ大会で、余興ではなたれていたウナギを執念で捕まえたことがあるのが静かな自慢。

Column

教えて! ウナギ大好き、ウ大臣

ウナギは好きですか? 白いごはんにこってり蒲焼。「今日はウナギ!」という日は無性にテンションが上がります。食や旅の取材で日本中を飛び回るウナギ大好きライター・嶺月香里さんが「ウ」の話を聞かせてくれます。

2022.12.08(木)
文・撮影=嶺月香里