「バトンが受け継がれていく」ということがテーマになった作品
――これまで「正義とは何か?」について考える作品は数多くありましたが、本作のキャッチコピーである「悪とは何だ。悪とは誰だ」を真っ向から問いかける作品は少なかったかと思います。お二人が本作の出演を通して考えたことや思うことがあれば教えてください。
西島 これは白石監督ならではだと思うんですけど、この作品の中で監督ご自身の気持ちが一番寄っているキャラクターがあるんです。そのキャラクターの最期を見て「これで正しいんだろうか」と思わせるラストなんですよね。
僕はそれが白石監督のリアリズムだと思うんだけど、みんな正しい部分も持っているし、間違っているところもある。「それでもみんな生きていくんだ」っていう無常観みたいなものも感じました。
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中村 僕はこの世界でもこの世界じゃなくても、「悪」というものは存在すると思っていて。例えば、性犯罪や快楽殺人のような「悪」は、どうあがいてもなくならないんだろうなと思うんです。
僕は今の日本のモラルとか、親から育てられた教育の価値観とか、そういう色々なもので形成されていますけど、生まれた国や場所が違えば善悪の判断なんて簡単に変わりますから。なので、自分ができることはせめて「悪人になりたくない」「悪人にしたくないな」って思いながら生きていることしかできないなって。
西島 今作の一番大きなテーマは「バトンが受け継がれていく」ということだと思うんです。「負けたら意味ないんじゃない?」っていう問いに、「いや、負ける意味っていうものがあるんだ」という答えのようなものをバトンにして受け継いでくことも描かれているので、個人的には子供たちにもこの作品を見てもらって、色々なことを感じてほしかったなと思います。
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中村 自分が生きているうえで思うのは、遠い国の誰かの命を守ることはきっと僕にはできない。でも、自分の触れられる範囲なら、何かしてあげられることがあるんじゃないかなって思うんです。
例えば、こういう作品を作ってみなさんに見てもらったことで、誰かの考え方に何か少しでも影響があったとしたら素敵なことだし、「その程度のことしかできないな」って思いながらも、「その程度をがんばろう」って思いながら日々生きています。
西島秀俊(にしじま・ひでとし)
1971年3月29日生まれ、東京都出身。94年「居酒屋ゆうれい」で映画初出演。その後、「Dolls(ドールズ)」、「空母いぶき」、「MOZU」シリーズ、「きのう何食べた?」シリーズなど多数の映画やドラマに出演。「ドライブ・マイ・カー」で全米映画批評家協会賞主演男優賞受賞。
中村倫也(なかむら・ともや)
1986年、12月24日生まれ、東京都出身。2005年俳優デビュー。以降、映画やドラマ、舞台と幅広く活動。現在、主演ミュージカル「ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~」に出演中。待機作に、舞台「ケンジトシ」(23年2月~公演予定)が控える。
『仮面ライダーBLACK SUN』
2022年10月28日(金) Prime Videoで全10話一挙配信。18+
出演:西島秀俊、中村倫也、三浦貴大、音尾琢真、濱田岳、プリティ太田、吉田羊、中村蒼、ルー大柴、中村梅雀ほか
監督:白石和彌
脚本: 髙橋泉
コンセプトビジュアル:樋口真嗣
©石森プロ・東映 ©「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT
2022.11.27(日)
文=根津香菜子
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=亀田雅(西島秀俊)、Emiy(中村倫也)
スタイリスト=カワサキタカフミ(西島秀俊)、戸倉祥仁(中村倫也)