額縁製作で培った技巧を
日々を幸せにする家具に昇華
◆伝統工芸
府中は福山の北西に位置する豊かな山々に囲まれた長閑なエリア。高度経済成長期に高級婚礼家具がヒットし、府中家具のブランドは広く知られるようになった。
工場のある上下町は江戸時代に天領として栄えたことから書道文化が盛んで、伝統工芸も額縁や屏風、茶道具などの製造に携わってきたが、業界の斜陽化や空洞化もあり、10年ほど前に方向転換をはかる。オリジナルブランド家具製造や、他社ブランドと提携するOEM生産に切り替えたのだ。
現在作られているオリジナルスツールやテーブル、フォトフレームなどは、樹種にウォールナットやオーク、ブラックチェリーなどを用い、どんな空間にもフィットするシンプルなデザインと、滑らかで優しい質感が特徴。家具は個性を主張し過ぎず、暮らしの引き立て役に徹するものと考えるからだ。
さらに、額縁を作る際に用いる“三方留め”という技術は、オリジナル製品の製造にも活かされており、これは熟練の職人にしか成せない技。三方を精緻に45度に結合させる接合技術は見た目の美しさとともに強度を持たせるという。
そして加工の最終段階で施される研磨は最も大事な工程で、充分でないと塗装が美しく仕上がらないそうだ。
木の自然な表情が生きるシンプルなフォルムの家具や雑貨に、卓越した伝統技術が詰まっているのだ。
伝統工芸
所在地 広島県府中市上下町階見1503
電話番号 0847-62-3377
https://dento.furniture/
※家具、木工のブランドはDENTO
文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘