かつて城下町や宿場町として栄えた広島県の福山、府中は、古くから伝統的な物作りが盛んで、今も世界に通じる職人技が息づいている。

 繊維業、木工業、鍛造や金属加工……etc. 暮らしに欠かせない様々なアイテムが作られている場所を訪ねる旅に出掛けませんか?


 何気なく愛用しているデニムや、リビングに置かれた家具や小物、日々使う調理道具など、毎日の暮らしを豊かにしてくれる物。

 物作りの産地、広島の福山・府中の旅は心に響く刺激的な体験が待っている!前編では生地製造の「篠原テキスタイル」、藍染の「藍屋テロワール」、家具・木工の「伝統工芸」の3社についてご紹介。

世界に通じる生地作りと、地域に
根差した取り組みの両輪で注目される

◆篠原テキスタイル

 高級テキスタイルのメーカーとして世界に名を馳せる篠原テキスタイルは、福山で100年以上前に創業した老舗。伝統的地場産業である備後絣の手織業からスタートし、世界中のアパレルブランドで採用されるまでになった。

 今ではデニム生地の製造に特化し、作られた生地の半分以上は海外ハイブランド向けという。また、最近ではラグジュアリーホテルの寝具などにも採用されることの多い、しなやかでほどよい光沢のテンセル生地製造にも定評が。「テンセルの篠原」とも称され、各ブランドから注目を集めている。

 再生繊維であるテンセルは原料にウッドチップを使用し、綿花よりも栽培から製品に至るまでの水使用量が格段に少ないことから、エコフレンドリーな生地と呼ばれる。リサイクルコットンやテンセルデニムなど環境に配慮した新感覚のデニム生地製造に積極的に取り組む姿勢からも、進化する時代の要請を汲み取った製品作りが窺える。

 篠原テキスタイルのデニム生地が既に世界に繋がり認められているのと同時に、プロジェクト ボレーガのメンバーでもある5代目の篠原さんは地域との繋がりも大切にしている。

 地元のサッカークラブ、福山FCの選手に移動時のデニムを提供し、福山がデニムの町であることをPRする活動にも意欲的だ。

 世界と地元を同時に見据えながら、愛され求められる生地作りを続けている。

篠原テキスタイル

所在地 広島県福山市駅家町中島703
電話番号 084-976-1511
https://www.shinotex.jp/
●オンラインショップ
https://shinotex.buyshop.jp/

文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘