かつて城下町や宿場町として栄えた広島県の福山、府中は、古くから伝統的な物作りが盛んで、今も世界に通じる職人技が息づいている。
繊維業、木工業、鍛造や金属加工……etc. 暮らしに欠かせない様々なアイテムが作られている場所を訪ねる旅に出掛けませんか?
何気なく愛用しているデニムや、リビングに置かれた家具や小物、日々使う調理道具など、毎日の暮らしを豊かにしてくれる物。
物作りの産地、広島の福山・府中の旅は、心に響く刺激的な体験が待っている! 後篇では鍛造・金属加工の「三暁」、桐箱の「曙工芸」、スニーカーの「スピングル」の3社についてご紹介。
自由鍛造の技術とハイテクから
生まれた趣ある調理道具や家具
◆三暁
福山の港町、鞆の浦において鍛造の歴史は古く、奈良時代の木簡にもこの地が鉄製品の特産地であることが記されている。
瀬戸内海の潮の分かれ目となる鞆の浦は潮の満ち引きを待つ船が数多く集ったこともあって、船釘や錨などを製造する船鍛冶がかつて隆盛を誇り、今も鍛冶町という町名が残るほどだ。
1951年創業の三暁もその伝統を受け継ぎ、船具製作所としてスタート。現在は鍛造、金属加工製品を手掛け、クレーンや橋、エレベーターなどで使われる重要部品の製造や、最新鋭の機器を使った精密部品製造が社業のメインである。そんなハイテクの三暁がなぜフライパン?
これは廃業する錨工場を引き継いだことがきっかけとなる。伝統的な鍛造技術を誇り、創業100年超ながらも高齢化で心ならずも途絶える工場と技術。三代目で代表の早間寛将さんに、これを絶やしてはならないという使命感が湧いた。
そこから錨製造の技術をフライパンや家具づくりなどに応用していくことになるが、2018年には家具ブランドTAonTAを立ち上げ、テーブルやスツール、ドアハンドルなどの製造を開始。アウトドア用調理道具などを手掛けるブランド、cocineroで鍛造体験プランも展開中。
伝統的なローテクと精密部品加工のハイテクの融合で、今の暮らしを彩る新しく味わい深いアイテムを生み出している。
三暁
所在地 広島県福山市鞆町後地26-179
電話番号 084-983-5551
https://sangyoco.co.jp/
※アウトドア、調理器具のブランドはcocinero(コシネロ) https://cocinero.jp/
家具、インテリア用品のブランドはTAonTA(タオンタ) https://taonta.jp/
工場見学はcocineroのホームページ参照
文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘