丁寧な手仕事の連続が支える
稀有で特殊なバルカナイズ製法

◆SPINGLE COMPANY

 ソールのゴムがそり上がって本体を巻き込む独特のデザイン。約180年前に米国で発明されたバルカナイズ製法でスピングルムーヴのスニーカーは作られている。

 レザーやキャンバスの靴本体と硫黄を加えたゴム底を手作業で接着し、専用釜に入れて熱と圧力をかけて完成させる特殊な製造法。これによりソールと本体の結合が強く、型崩れしにくくなるという。

 通常のスニーカー作りのおよそ倍以上の時間と手間がかかることから、日本でこの製法を採用するメーカーは僅かだそうだ。
 
 元々はゴムの製造会社で、床材や長靴を始めとするゴムの履物を作っていた。約20年前に「スピングルムーヴ」をブランドとして立ち上げてからは、ホールド感のある履き心地、歩きやすい設計、遠くから見てもスピングルムーヴと分かる斬新なデザインをモットーに、職人技が受け継がれてきた。

 本体に使用する素材にもこだわり、皮革やテキスタイルなどさまざま扱うが、中でも人気のカンガルー革は牛革と比べて軽くやわらかいのに、耐久性に優れているという。

 機械も多く導入されているものの、釜に入れるまでは職人の手作業が延々と続く。ゴム底の型を抜くのも、縫製された本体にゴム底を貼り込むのも、機械頼みだと理想の造形に届かない。

 職人の豊富な経験が細部に宿る無二のスニーカーは、履けば必ず愛着が沸く。

SPINGLE COMPANY

所在地 広島県府中市府中町74-1
電話番号 0847-41-5609
https://www.spingle.jp/

Feature

広島県の福山・府中
世界に誇る物作りを訪ねる
マニファクチュア ツーリズム

文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘