【たとえ「内緒だよ」と言われなくても
承諾なく公表はしない】

 性的多様性への理解については、最近、パートナーシップ制度を導入する自治体が出てきてはいますが、とはいえ、受け入れの社会的風潮は、まだ十分なものとはいえません。

 同性を恋愛対象とする事実は、あくまでその人個人のプライバシーにかかわる問題です。

 自分が同性愛者だと打ち明けるのは、受け入れてくれそうな限られた人だけにしたい、積極的に他人に開示することをためらう、というのは普通のことです。

 特に、性的少数者への理解が不十分な日本の現状で、そういう方は多いと思います。

 ですから、打ち明けた友人の承諾なく、他の友人とその事実を共有すること、まして不特定多数に同事実を公表することは、たとえその友人から「内緒だよ」と言われていなかったとしても、プライバシー権侵害に該当する可能性があります。

 今回のように、本人の承諾なく、本人が公表していない性的指向や性自認を第三者に公表することを「アウティング」といいます。

 過去には、友人にアウティングをされた方が、それを苦に自ら命を絶ってしまった痛ましい事件も起きています。

社会全体で理解すべきこと

 同性から告白されて、どう対処したらいいかわからず、誰かに相談したくなることもあるでしょう。

 しかしそれは、日本の現状においては、まだまだセンシティブかつデリケートな事柄です。

 あなたが誰かに相談することが、あなたに想いを伝えた人を苦しめ、時に自ら命を絶つほど追い詰めてしまうこともあると、肝に銘じておく必要があります。

 同性を恋愛対象とするのは自然なことであると社会全体が十分に理解していない現状では、各人が思慮深く行動することが大切です。

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菊間千乃(きくま ゆきの)

弁護士法人松尾綜合法律事務所弁護士。早稲田大学法学部卒業。1995年、フジテレビ入社。アナウンサーとしてバラエティーや情報・スポーツなど数多くの番組を担当。2005年、大宮法科大学院大学(夜間主)入学。07年、フジテレビ退社。11年、弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。19年、早稲田大学大学院法学研究科先端法学専攻知的財産法LL.M.コース修了。紛争解決、一般企業法務、コーポレートガバナンスなどの分野を中心に幅広く手がけている。