梵鐘の響きとともに
いよいよ開門

 特別拝観に先立って、抽選で選ばれた限定80名に向けて、大講堂・円通殿では清水寺貫主・森清範師のご法話と桂米團治師匠による古典落語「はてなの茶碗」が披露された。

 この落語は、境内にある音羽の瀧の畔にある茶店が舞台となっている。

 いまから千二百余年前、清水山(音羽山)の中腹に僧・賢心と坂上田村麻呂によって創建された清水寺。霊験あらたかな観音霊場として、身分を問わず幅広い民衆の信仰を集めてきた清水寺ならではの演目だ。

 いよいよ特別拝観の時間が近づいてきた。受付を終えた参加者は仁王門下の広場で開門を待つ。

 午後6時半、清水寺の僧侶大西英玄師がつく梵鐘の響きが境内にこだました。それを合図に、ライトアップされた伽藍が一斉に闇の中に浮かび上がる。

 応仁の乱の戦火で失われた清水寺の梵鐘は、民衆の寄進により新たに鋳造され、京の都に戦いの終焉と平和復興を告げ知らせた。それから530年を経た平成20年、新たな梵鐘が寄進され新旧は交代した。

 その平成の梵鐘の響きが雨雲を掃ったのだろうか。それまで時折ちらついていた雨もすっかりあがり、参加者は仁王門の石段を上がっていった。

文=秋月 康
撮影=釜谷洋史