青色行燈に彩られた
境内の本堂へ
仁王門の石段の両側には、青い行燈が並べられている。観音様の化身である青龍が夜毎境内の音羽の瀧に飛来し、水を飲むという伝説に基づいた光の演出だ。
3筋で流れ落ちる音羽の滝をイメージして、仁王門の奥、西門石段には行燈を並べて3本の青い光の帯が設えられている。
今回の演出のテーマは3つ。その1つ目が、深い闇に現れる幻想的な「光」だ。そして2つ目は、秋の清水寺を感じさせる「音」。
梵鐘の響きが治まった境内には、秋の夜の虫の音を思わせる静かな笛の音が流れている。その調べに耳を傾けながら、三重塔、経堂、朝倉堂と境内の建物を巡っていく。
薄明かりの中、境内を歩いていると、平安の昔、観音様の加護を祈願しに清水寺にお籠りにきた貴人とすれ違うような、そんな錯覚にとらわれる。
いよいよ本堂へ。轟門をくぐり、回廊へ足を踏み入れた途端、息を呑んだ。雨に濡れた石畳に天井の吊燈籠の光が映り、それを縁取るように青い行燈が本堂へと続いている。一足ごとに時の流れを遡っていくかのようだ。
本堂は寛永6年に焼失、3代将軍・家光によって再建されたものだが、平安王朝の寝殿づくりの優雅な面影をとどめている。
断崖にせり出した「舞台」は、長さ最大12メートルの欅の柱18本を立て、縦横に貫を通し、くさびで固定した日本古来の伝統工法だ。
文=秋月 康
撮影=釜谷洋史