“どこで”ではなく、“誰と”で働く場所を選んできた
睡眠時間の確保より人と会うことを優先するほど人と接することの好きな彼女が、メールアドレスを変えてまで友人との連絡を断ち、試験に挑んだ。努力が実ったのは2回目の司法試験。その後、1年間の司法修習を経て、ようやく今、弁護士としての人生が動きだした。
「今は、お金では買えない経験をたくさんさせてもらっています。81歳になる事務所のボスには、祖父の代から3代にわたるクライアントさんもいれば、遠方からボスを頼りに人生を賭けた相談をしにくる方もいます。自分も誰かのそういう存在になれる可能性を秘めていると思うとゾクゾクするし、何十年か先の自分の理想像を目指して、仕事ができているのが、とても幸せです」
とはいえ、40歳にして新人という立場で、プライドが傷つくことはないのだろうか。
「プライドなんて、昔からないですよ。みなさん弁護士の世界では先輩ですし、実際教えて頂くことばかりですから。プライド等に縛られないから、どんな環境でも楽しく生きていけるんでしょうね。仕事のストレスの大半が人間関係だと思うのですが、私は“どこで”よりも“誰と”で働く場所を選んできたので、昔も今もノンストレス。尊敬するボスの下で仕事ができていることが幸せで、少しくらい嫌なことがあっても、それもひっくるめて楽しいと思える毎日です」
仕事と同時に生き方も学んでいます
どうしても合わない相手がいても、自分次第でノンストレスの環境に変えていけるはずだと彼女は言う。
「会社や上司に変わることを求めるより、自分が変わるほうが圧倒的に早いんです。例えば、明らかに相手が悪くても、自分から折れてみる。たったそれだけのことでも、二人の関係性が動きますよね。自分のプライドを守るより、環境を優先させることを考えて行動すれば、きっと、ストレスの少ない職場になっていくと思います。今は転職も大変だし、会社を辞めるのは思った以上に過酷な道。安易に辞めるべきではないと思うので、今いる環境を楽しくすることをまずは考えてみて欲しいです」
『私が弁護士になるまで』
菊間さんの決断を更に詳しく!
アナウンサー時代の葛藤からフジテレビを退社するまで、退路を断ち、司法試験に向けて勉強を続ける過酷な日々から、夢を現実に変えた現在に至るまでを克明に綴る(文藝春秋 ¥1260)
2012.06.18(月)
text:Yuki Imatomi
photographs:Tamihito Yoshida