600年以上前から続く
青空議会が開かれる村

ホーアー・カステン展望台から眺める雄大な風景。遥か彼方まで見渡せる爽快感が最高!

 日本の九州よりもやや小さい国土に実に多様な文化がぎゅっと凝縮しているスイス。ドイツ国境に近いアッペンツェルは、希少な社会制度を今もなお守り続けていることで知られる村だ。

カラフルな模様やイラストで彩られているアッペンツェルの建物。まるでおとぎの国のよう。

 毎年4月の最終日曜日――この日は、アッペンツェル村民にとって特別な意味をもつ。1378年からの歴史を誇る青空議会“ランツゲマインデ”が開かれるからだ。例年約6000人が一堂に集まり、村に関する議題をその場で討議、挙手によって採決する。かつてはスイス各地で同様の住民投票が行われていたが、現在ではアッペンツェルとグラールスの2州のみ。21世紀に生き残った直接民主主義のあり方を見たいと、現在ではたくさんの観光客が訪れるイベントとなっている。

左:静謐な聖マウリティウス教会の礼拝堂。
右:村内には、クマを紋章にしたアッペンツェル・インナーローデン準州などの旗がはためいている。

 村の中心は、ランツゲマインデが開かれる大きな広場と、ここから聖マウリティウス教会に向かうハウプト通り。おとぎの国のようなカラフルな建物が立ち並ぶ。そして村を少し離れれば、感動の大絶景が広がっている。たとえば標高1795メートルのホーアー・カステン。山頂から眺める360度のパノラマは圧巻だ。

仕事内容を表した昔ながらの看板がメルヘンティック。こちらは大工道具屋さん。

 おとぎの国のような村と、感動の大自然。両方を一日で楽しむ欲張り旅も、スイスだからこそ、いとも簡単に実現できるのだ。

村民の一年の暮らしが描かれた古い民家の壁。

APPENZELL(アッペンツェル)
スイスの60%以上を占めるドイツ語圏。特にドイツ国境に近いエリアは、メルヘンティックな光景が広がる可愛い村が点在。なかでもアッペンツェルは、中世に起源をもつ青空議会(ランツゲマインデ)が今も開かれ、独自の文化がしっかり息づいている。

●アクセス チューリヒからスイス国鉄、アッペンツェル鉄道を乗り継いで約2時間。ザンクト・ガレンへは、アッペンツェル鉄道で約50分。

Photo=Taisuke Yoshida
Edit & Text=Shojiro Yano
Special Thanks=Mieko Tscherter、Toshimi Brunner