嘉永年間に建築された日本家屋を移築して作られた宿。撮影:釜谷洋史 母屋に入るとすぐに広がる大きなガラス窓からの中庭の景色。陶芸家で花の木の主人でもある渡辺陶生さんの作品もいたるところに展示されています。 今回お話を伺った、女将兼料理人の渡辺明子さん。心のこもった丁寧なおもてなしに、訪れた人の心もすっと解きほぐされます。撮影:釜谷洋史 佐渡島の農家さんが作ったものが集まるお店をまわり、その日の食材を選びます。新鮮で旬な野菜がぎっしり。 地元の魚屋さんで仕入れた、佐渡島の海で獲れた海鮮の数々。 「御宿 花の木」の名物でもある、赤泊の網元から仕入れた獲れたての紅ズワイガニ。1月・2月以外は、夕飯時に一人一杯提供される。 佐渡で採れたゆずの皮をすりおろし、味噌と和えたゆず味噌。こっくりした味噌にゆずの爽やかさが相まって、野菜につけていただくと良いアクセントに。 中庭には、山椒や茗荷などが自生。少量づつ収穫して、その日の料理に使っているそう。 庭先にも椿の花が。今は娘さんが椿油の製造を受け継いでいます。 冷蔵庫でも保存できる糠床。ブラウス一枚で過ごせるくらいが、乳酸菌が一番好きな気候なのだとか。 大根にわさび菜、カボチャなど、佐渡島の畑で作られた野菜や果物を買い付け。晩秋の時期はまろやかな甘みが口いっぱいに広がる「おけさ柿」も旬。 大根、レンコン、ほうれん草、キクラゲ、クコの実など、薬膳を考慮した素材を出汁とごま油でしたてたもの。 佐渡の海でとれたもずくを塩抜きし、もずく酢に。アクセントにピリリとした辛子菜ときれいなピンク色の菊の花が添えられ、視覚的な彩りも豊か。もずくが枯れてしまう夏のシーズンにはワカメ酢を提供しているそう。 素揚げしたナスに自家製のゆず味噌を挟んで。じゅわっとしたナスの旨みと、ゆず味噌の甘みのある爽やかな風味がベストマッチ。 豆腐とかぼちゃに薄衣をつけて天ぷらにし、上から優しいお味の白餡をとろ〜り。 エビや生ハムが乗ったサラダは、渡辺さんが絞っているという自家製の椿油、佐渡の海洋深層水から採れた塩、レモンを絞って。 今はほとんど市販されていないという、コシヒカリのクラシック米。ふっくら艶やかな炊きあがりの香りの良さと、口のなかで広がる風味は、訪れる人たちの心掴んで離さない。 赤カレイとゴボウの煮付け。骨がなるべく少なく、食べやすいものを提供したいという渡辺さんの気持ちがこもった煮付けは、ふっくらと柔らか。 大きなお皿いっぱいに広がるブリ、鯛、平目、真イカのお造りは、食べ応えじゅうぶんな分厚さ。白身は、サラダの味付けにも使用した椿油や塩もよく合う。 紅ずわいカニは一人にまるごと一匹提供されるという、なんという贅沢! デザートは、晩秋の時期に旬をむかえるおけさ柿とビオーレ。 料理場を一人で切り盛りしている、女将兼料理人の渡辺明子さん。撮影:釜谷洋史