まずは「ときめいてほしい」
現在はフランス、イタリア、ポルトガルなどのヨーロッパ各国やアメリカから、小鹿田焼の文化や歴史を勉強した上でわざわざ足を運びに来るお客さんも増えているという。
かく言う編集部も小鹿田焼の魅力を紐解くために、歴史や特徴について前のめりに質問を重ねていたが、長年窯元と向き合い、世界中の観光客を接してきた佐藤さんは、器との出逢い方をこう教えてくれた。
「器は長年付き合っていくものですから、『この陶器にはこんな歴史があって……』と、うんちくを話すために買ったものは飽きが来ると思うんです。でも目に入った瞬間、自分の心にときめいた器なら飽きが来ない。そういう直感を頼りに、モノを選んでもいい。長く使いたい器を選ぶには、情報をあまり入れないほうがいいかなと思っています。前情報を入れずに器をパッと見たときの、揺さぶられるような感覚が大事なのではないかと。
ツアーで『ここに行きますよ。そこにはこんな歴史がありますよ』と刷り込まれてから臨む旅と、自然とふらっと立ち寄った旅の感動は全然違います。情報化社会や消費社会で溺れそうになる今の時代は、後者のような偶然性が求められているのではないかと思います」
《この窯には時代がないのだといった方が早い。思いようによってはまさに時代遅れの窯である。それを謗(そし)る人もあろうが不思議なことには最も進んだ科学が産むものより、ともかく美しい。》
(『工藝 第九号』「日田の皿山」1931年)
柳が小鹿田焼に見出した素朴な美は、いまも変わらず日田の山奥で息づいている。
●鹿鳴庵
所在地 大分県日田市殿町3906
電話番号 080-8552-9687
営業時間 11:00~18:00(冬は17:00まで)
定休日 不定休
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