週に一度扉を開けるだけでいい
一瞬Oさんがふざけているのかと思ったそうです。ですが、普段あまり冗談を言わない彼に限って、今急にこんな冗談を言うとはとても思えません。
「入居時に大家さんの老夫婦から頼まれたんです。『お部屋のクローゼットの奥に“アカちゃん”という名前のお人形さんがいる木箱があるんだけど、週に1回5分くらいでいいのでその木箱の扉を開けてもらいたいんです』って」
ぼーっと前を見たまま話を続けているOさん。
「最初は面倒だなと思ったんですよ。そもそもクローゼットのスペース勝手に占有されているし、大家さんの家に持っていけばいいのにって。でも、『ウチには置けるところがなくて』って言うんですよ。まあ、大家さん夫婦いい人たちだし、家賃も安いしそれくらい仕方ないかなぁ~って」
「……じゃあ1週間は家空けられない生活なんだ」
根本的な異様さについて色々問いただしたい気持ちはあったのに、口から出てきたのはそんな間の抜けた問いでした。
「ああ、それは大丈夫です。事前に伝えておけば大家さんが代わりに開けてくれるんで。人来るまではずっとそうしていたみたいですね」
掃除もしなくていい。
ただ、週に一度扉を開けるだけでいい。
「意外と、綺麗な顔をしてるんですよ。膝丈くらいの大きさの木箱に入っているんで、最初はちょっとビビりましたけど」
「へー……」
「あの人形、多分、大家さんが作っているっぽい感じなんですよね。西洋人形風の顔立ちなのに、服装は手作りの和服だし」
「あのさ……」
