ワイン祭りで試飲会を楽しもう

 パンツァーノはキャンティのなかでも伝統的な地域、キャンティ・クラシコの生産地として認定されています。当然、生産のメインはこのキャンティ・クラシコ。イタリア原産種のブドウ、サンジョヴェーゼ種を80%以上使用したものをキャンティ・クラシコと呼びます。このワインは酸味と渋みがしっかりと際立った味わいが特徴で、肉料理などによくあいます。

会場ではその年に売り出すワインがいち早く試飲できます。

 世界的にも有名なこのワインを目当てに、各国からたくさんの人が集まっていました。私が少しお話しした来場者は、カナダから来たワイン好きのご夫婦、経営するワインショップのために買い付けにきたアメリカのビジネスマン、オランダ人の若いカップル、この時期・この地方のいろんな町で開かれるワイン祭りを自転車でまわっているという強者のドイツからのお客さんもいました。試飲と言いながらしっかり飲みつつ生産者の人とワイン談義を楽しんでいる地元のおじさんまで混じって、小さな広場は人でいっぱい。みんなワインが大好きなのですね。

思い思いに試飲をしてワインを楽しむ人々。

「取材」と称して、片っ端から試飲をしまくった私。同じキャンティ・クラシコでも生産者によって、ほー、こんなにも味が違うのかと感心。そんな発見ができるのも、飲み比べできる試飲会ならでは。そんななか、私好みのワインに出会ったので、「美味しいねー、すっごく好み」と生産者の人に話していたら、「それよりもさらに美味しいものがあるよっ」と、ほめられて気分を良くしたのかおじさんが出してきてくれたのが「キャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネ」。キャンティ・クラシコでも厳選したブドウのみを使ったものでした。これが、味わいがぐっと深く、酸味のすっきりさがさらに際立った秀逸な味。おいしー!! でもなぜ隠していたかというと、実はこのワインのためだけに試飲会を後で開く予定があり、そこでお披露目となるものなので、この会場にはサンプルに数本しか持ち込んでなかったからだそう。

左:産地で行われるワイン祭りは、ワインだけでなくその土地の雰囲気も味わえる。
右:秘蔵のキャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネ。

 このように、生産数の少ない稀少ワインもお目見えする、地元ならではのワイン祭り。大きなワイナリーが作る安定した美味しさのワインから、小さなワイナリーがこだわりを持って作ったワインまで、それぞれに心行くまで楽しめます。

 お話を伺っていると、小さなワイナリーでも、日本にも卸してるよ、というところが結構あり、こんなところまで開拓している日本のバイヤーさんの努力に頭が下がる思いとともに、この美味しいワインたちが日本にも届いていると思うとなんだか嬉しく思いました。

 秋晴れも美しい好季節、みなさまも美味しい秋の味覚をたくさん召し上がって、爽やかにお過ごしになりますように。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック https://www.facebook.com/chococogogo

 

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文・撮影=藤原亮子