知る人ぞ知る、ローマ郊外にある食材の宝庫
ローマ郊外に移住した友人から、彼女が住むヴィテルボ県ブレラという街(ローマから北へ80キロほど)でトリュフ祭りが開催されるから来ないか、との誘いがあった。これは逃すわけにはいかないと、トリュフ好きの私はふたつ返事で早速遊びにいくことに。
ローマが州都のイタリア中部ラツィオ州。そのラツィオ州北部に広がるヴィテルボ周辺は「トゥーシャ(Tuscia)」の名称で親しまれている。古代ローマ時代以前から存在し、高度な文化を持っていた謎の民族とされるエトルリア人の拠点だったエリアだ。地味なせいか、PRが下手なせいか、外国人旅行客に知名度は低いが、トゥーシャ一帯は昔から有機栽培が盛んで、美味しい食材には事欠かない「食の宝庫」として食通たちに知られている。イタリア中部で黒トリュフといえば、真っ先にウンブリア州をイメージするが、実はラツィオ州北部でも質の高い黒トリュフが採れるのだ。
自宅から車を走らせること1時間弱。待合せ場所のメイン広場に辿り着いたのは、ぼちぼち人が集まり始めた夕方近くだった。まだ厨房がオープンしていないからか、広場いっぱいに設置された長テーブルに座る人の数はまばらだ。
土曜日の夜は長蛇の列になるからとの友人のアドバイスでまずは食券を購入し、特設の野外トラットリアがオープンするまでの間、旧市街地をのんびり散策することにした。
長期のバカンスへ繰り出す人が年々少なくなっているイタリア。いっぽうで都市や近郊の街では夏祭りが盛んに開催されるようになった。ブレラでも毎年公立の学校が夏休みに入る6月中旬から8月下旬まで、ほぼ毎週末、大小様々なイベントが行われるそうだ。
冷房設備がなかったひと昔前までは、街の住人たちが食べ物や飲み物を持ち寄って広場に集まり、寝苦しい真夏の夜をやり過ごしたという。こういった夏祭りは観光プロモーションだけでなく、稀薄になりつつある住人たちの結束を固めることにもひと役買っているようだ。
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文・撮影=村本幸枝