“桜が満開になる展望台”へ

 とはいえ、テレビで特集されているようなスポットは人混みだらけ。悩んだ彼は、友人に良い穴場を知らないかと相談したところ、『車で行けばそう遠くない山の上に、桜が満開になる展望台がある』という耳寄りな情報を手に入れたのです。

「で、俺の車で女乗っけて行ったんだよ。確かに人は少なくてよかったんだけどさ、展望台まで続いている遊歩道っつーの? あそこが草ボーボーで、しかも当日Aのバカがスカートで来やがってさ。足に草とか葉っぱが当たるのが嫌とか言い始めたわけよ」

 Kさんは仕方なく先陣を切る形で草むらを進み、その後をAさんがついていく形になりました。

 幸い、ザクザクと草むらを掻き分けていくと、数分で白いモルタル製の古びた展望台の下に出たそうです。

 展望台には上へ登る階段がついており、Aさんは先導したKさんをよそに駆け上がるや、そこから見える桜の花々に感嘆の声を上げました。

「俺もいっちょ花見でもすっか、って階段を登ろうとしたときにさ、急にションベンしたくなっちまったんだよ」

 辺りを見回しても公衆トイレのような場所はなく、Kさんは仕方なく彼女に用を足してから行くと告げて、近くの草むらに向かったのです。

「『音が聞こえないようにしてよね!』だの『せっかくのお花見が台無し!』だのうるさくってさ。さっさとさっきの草むらにまた入っていったんだよ、そしたらな――」

 草むらの中にやたらと背の高い草が生い茂っている場所、正確に言うと少し盛り土のような、丘のような感じに地面が盛り上がっている一角を見つけたのです。

 ちょうどその背の高い草の向こうで用を足せば彼女も文句を言ってこないだろう――そう思ったKさんはそそくさとその小さな丘の向こう側へ歩を進めました。

「おっと……んだよ、これ!」

 つま先が何か固いものに当たる感覚。

 Kさんがその形を足で踏みつけるようにして確かめ、そのまま視界を遮る草を踏みつけてどかしていくと、それは“小さな石碑”だとわかりました。

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