セルフプロデュースが無意識に上手い

桃子 原稿用紙に投影された自分こそ、今の自分だと思う。祖母にとって文章を書くとは、そういうことじゃないかと思うんです。

響子 客観性でしょ。自分も含めて客観視しているんじゃない?

桃子 それもあるかもしれないけど、自分はこうだと書くことによって、自分を奮い立たせるんだなってずっと思ってました。

響子 母は父の悪口ばかり言っていたけれど、『晩鐘』にはホロリとする描写もあって。あれを読んだ時は、作家の佐藤愛子と生身の佐藤愛子、2つの目を持っているのかなという感じがしました。

桃子 90歳からの祖母の本が売れた理由を考えると、佐藤愛子という作家はセルフプロデュースが無意識にうまいというか、自分はこういう人間ですと言っちゃう図々しさがあって、それがみんなを惹きつけるのかなと思うんです。

響子 私は生まれた時からこれが普通だったけど、世間の人はもっと遠慮がちに生きているんだよね。

桃子 社会の通説みたいなものが予定調和だとすれば、祖母にはそれはわからない。祖母の中には自分しかいないから。それが新鮮に映るのかもしれない。

響子 破天荒な家だからね。

桃子 響子さんもその家の人間として、かなり濃く育ってるよね。

響子 親1人子1人という環境もあるんです。母がずっと2階で仕事をしていて、私は1人1階でマンガなんかを描いている。母が下に降りてくるとやっぱり嬉しいんですよ。パッと部屋が明るくなるような感じがありました。

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