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高温多湿な台湾ならではの「蒸れない」吸水ショーツを開発

――ユアンイーさんは、「ムーンパンツ」のデザインを担当されています。どんな点にこだわりながら開発していきましたか?

 「ムーンパンツ」のこだわりは、いくつかあります。まず着目したのは、高温多湿という台湾の気候です。ナプキン使用時に「蒸れて気持ち悪い」と思う人が大半なのですが、使い慣れているという理由で、そのまま使い続ける人が多かったんです。

 そこで、吸水ショーツはまず蒸れないことを重視しました。さらに吸水面が厚いと穿き心地がよくないので、穿いていても、何も感じない、生理だということを忘れてしまうようなパンツにしたいと、いつもの下着と同じ感覚で穿ける吸水ショーツを目指しました。

――「ムーンパンツ」の吸水ショーツは、吸水面が薄いのが大きな特徴ですよね。吸水量を担保することを考えると、どうしても厚くなってしまうように思うのですが、どのようにして実現できたのか気になります。

 大きくふたつあります。まず、生地にはすごくこだわりました。例えば、スポーツウェアは、汗をかいてもすぐ乾く、速乾機能のある生地が使われていますよね。「ムーンパンツ」にも、蒸れにくく、すぐ乾く機能性の高い生地を採用したいと考え、何度もテキスタイル見本市に行って、世界中の生地を比べてみました。そこから厳選し、肌に触れる部分用のさらさらシート、素早く吸収するための速乾シート、通気性のある防水シートと、機能が異なる生地を採用することで薄い吸水面を実現しています。

 もうひとつは、経血漏れへの対策です。一般的な縫い目では、どうしても経血が染み出してしまいます。そこで、「絶対経血漏れを起こさせない」という想いで、何度も試作を重ねて開発したのが、巻き込み式漏れ防止法という特許を取得した技術です。この技術を吸水面に取り入れたことによって、経血漏れをブロックしています。

――2018年に「ムーンパンツ」が誕生した頃は、吸水ショーツは普及していなかったと思うのですが、どのように広めていきましたか? 「ムーンパンツ」の活動は、Facebookや生理をテーマに開催されるリアルイベント「月月会」など、コミュニティを大切にしている印象があるのですが、それも生理や生理用品を知ってもらうために行っていたのでしょうか。

 台湾は保守的な文化ということもあり、生理用品の選択肢が広がっても、生理にまつわることは友達ともあまり話をしない、恥ずかしくて言えないという風潮は残ったままでした。ですが、私たちは生理について、誰もがオープンに話せるようになるといいと思っています。そのためには、さまざまなコミュニティが大切だと感じています。

 「ムーンパンツ」を開発する過程でも、さまざまなプラットフォームで一般消費者とコミュニケーションを重ねてきましたし、販売もFacebookから始めました。台湾では、SNSのなかでもFacebookが一番見られているということもあって、知ってもらうためにも有効だと考えました。

 また、Facebookに広告を出すことでターゲット層をセグメントできます。そのターゲットのなかでも、今まで生理でイライラしたことがあるなど、生理に悩みがある人たちに「ムーンパンツ」のリンクをお送りして、「我々の製品使ってみない?」「生理中でも白い服を着ても大丈夫だよ」「生理期間でもいつもの自分でいられるよ」ということをお伝えしていったところ、だんだん口コミで広まっていきました。

 リアルイベントとしては、2022年より2回の「月経フェスティバル」を開催し、2年間で合計1万人が来場しました。そのなかにも、「同じ女性でも他人だから、やっぱり生理のことは恥ずかしくて話題にできない」という人もいらっしゃいます。なので、ウェブ上にあるような生理の悩みのほかに、「生理にはいろんな形があるんだよ」「こんな生理用品があって、発展しているんだよ」と、生理と生理用品の知識・情報も展示しました。

 今まで知らなかった事柄に触れる機会を創り、もっとオープンに、安心して女性同士でコミュニケーションがとれるように工夫することも大切だと思います。

2025.01.31(金)
文=木川誠子