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広葉樹の森を思わせる空間で飛騨の匠の技に挑戦

 食後は大浴場や客室のお風呂をリピートするもよし、気軽に足湯を楽しみながらくつろぐのもよし。足湯の背後はトラベルライブラリーで、サービスのコーヒーやお茶を片手に読書を楽しむことができます。

 壁面には、ブナ、ナラ、タモ、サクラなどの木材を配し、飛騨の匠が実際に使った木工道具を展示。チェアは客室や食事処と同じく、曲木家具で有名な飛騨産業(高山市)のもの。背板から肘木にかけて一本曲木が使われ、日本人の体にやさしくフィットします。

伝統工芸の曲げ木に挑戦!

 全国の「界」では地域の文化を体験できる「ご当地楽」を実施。「界 奥飛騨」では、1300年以上にわたる飛騨の匠の歴史に触れ、木の手触りや香りを感じながら匠の木工技術を体験する「飛騨の匠体験」が人気です。

 県の面積の8割以上が森林に覆われた岐阜県は、古くから森林資源に恵まれ、その環境が伝統的な技術や工芸の発展を支えてきました。

 なんでも、飛鳥・奈良時代に律令政治が始まった頃から、いまの岐阜県にあたる飛騨国では木工技術に優れた職人集団(飛騨の匠)を朝廷に派遣することで、租庸調(税)の一部が免除されていた記録があるのだとか。これにより、飛騨地方は木工技術がさらに発展し、宮殿や寺院の建築にも貢献したそうです。

 こうした飛騨のストーリーも興味深い「飛騨の匠体験」では、実際に木を曲げて、界オリジナルの風呂敷を結んで使う曲木のバッグハンドルを作ります。お湯につけて柔らかくしたヒノキの板を曲木の型に押し付けて曲げていくのですが、これがけっこう難しい!(不器用なので……)。

 力が弱すぎると曲がらないし、強すぎると折れてしまうので、ちょうどいい力加減を掴むまで少し時間がかかりましたが何とか完成。いい感じに曲がったら、電子レンジで乾燥してもらいでき上がりです。

2024.12.31(火)
文=伊藤由起
写真=志水 隆、伊藤由起
写真協力=界