その一方で、たくさんの出会いがありました。ずっと憧れていた爆笑問題の太田光さんと対談したり、山田勝己とSASUKEチャンネルに出たりという経験は本屋大賞あってのものです。書店員さん、出版関係者、メディア関係者と、いろんな人と出会いました。
きっと『婚活マエストロ』のケンちゃんも同じです。鏡原さんや婚活パーティー参加者と出会ったことで、ケンちゃんの世界は確実に変わっています。だけど、日常生活はさほど変わりなく、自分のことをザコいライターだと思い続けているはずです。
本との出会いもそれに近いものがあって、「この本を読んで世界の見え方が変わった」とか、そこまでいかずとも「この本のここが印象的だった」と思うことはよくあります。日々の生活は変わらなくても、その本に出会う前の自分には戻れない、そんな感覚です。
わたしの本からもそういう思いを受け取る人がいるのであれば、光栄に思うのと同時に、責任重大であるとも思います。
このたび一足早く『婚活マエストロ』の著者見本をいただき、手に取った瞬間、素直にうれしいと感じました。引き受けたことを後悔していたものの、あのとき書きはじめたから今があります。
ケンちゃんと鏡原さんがどんな道を歩むのか、最初から決まっていたわけではありません。書いているうちに「こっちのほうがいいかな」「いや、こうはならないな」などと二転三転して、ラストシーンに着地しました。
鏡原さんは真剣な出会いの場を提供することに燃える人物です。真剣な出会いからはたくさんの分岐があって、結婚にたどり着くのはほんの一握りであることを身をもって知りました。
ケンちゃんと鏡原さんが織りなす『婚活マエストロ』。婚活に興味がある人もない人も、お楽しみいただけたら幸いです。
婚活マエストロ
定価 1,760円(税込)
文藝春秋
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2024.11.06(水)
文=宮島未奈