人間はおもしろおかしいぐらいがちょうどいい

 そんな源太郎のもとに集う家族ももちろん最高。母の千鶴(MEGUMI)はつかみどころがないから能天気のようにも、懐が深いようにも見える。それは高めで軽めに仕上げられた喋り声のたまもので、それによりとにかく“普通のお母さんじゃない”と感じさせるからすごい。でも所作は適度に雑でリアリティがある。かつて田中好子さんが演じていたような(『ちゅらさん』再放送観てます)THE 日本の母親像とはまったくかけ離れた、新しい母親像をMEGUMIが見せてくれています。

 それに三姉妹のキャスティングも秀逸。長女・由香に木南晴夏、次女・里香に佐久間由衣、三女・美香に武田玲奈。性格はバラバラでわかり合えないこともあるけど、家族としてつながっている。現実の姉妹間にあるような微妙な関係性や距離感の再現度も高めなんです。そんな3人の会話劇も見事。『ブラッシュアップライフ』で3人の女性たちによるトライアングル雑談の良さを知っているあなた、その姉妹版がすでにあったんです!

 さらに家族に関わる大森(浜野謙太)や渡辺(太田莉菜)、美香の同僚のシイナ(野波麻帆)、美香の彼氏のユウジ(須藤蓮)などほかのメンバーもとにかくクセ強め。描いているのは日常なのに、このワールドに普通の人なんていないんです。でも、日常ってそれでいいのかも。

 幼稚園から集団行動が始まり、協調性を叩き込まれ、成績で優劣をつけられ、受験による勝ち抜き戦が行われ、社会の優良な歯車(量産型)になることをよしとする教育を受けて育つと、真面目なやつこそ優秀だと思いがちだけど、本当にそうなんだっけ? 

 結局、理不尽で、窮屈で、正義やルールすら通用しないことが多々ある世の中を生きることに何の不満も持たない人間のままでいるよりも、私たちはもっとこのドラマの面々みたいにおもしろおかしく生きていいのかも! もっと人生をコメディーにしていいのかも! そこまで思わされます。

2024.06.21(金)
文=綿貫大介