年間通して温暖な海岸・平地部に対し、山頂付近の平均気温は札幌と変わらないと言われ(標高が100m上がるごとに約0.5度ほど気温が下がる)、小さな島でありながら、日本列島を縦断したように多様な気候・天候・植生が詰め込まれている。
この島の大型動物は、ヤクシマザル(ヤクザル)とヤクシカ、そして人間の3種のみ(※近年島外から持ち込まれたタヌキが一部で確認されている)で、「ヒト2万、サル2万、シカ2万」などと言われるほど、猿と鹿が多く生息している。
厳密にはヒト、サル、シカともにそこまでの数はいないのだが、猿がこれだけ広く高密度に分布する場所は屋久島以外にはなく、猿撮りの私には聖地と呼ぶに値する場所である。
「一目で違和感を覚えるほど…」島の大型動物の“傾向”
ヤクザルとヤクシカは、私たちにとって馴染み深いニホンザル、ニホンジカの亜種という分類に位置づけられるが、一見した感じはいわゆる“猿と鹿”である。しかし、猿の体毛は灰色がかって粗く、鹿も胴部分に対して四肢が短かったりと、細かな身体的特徴が色々とある。
なかでも特筆すべきは体の大きさで、ヤクザルはニホンザルと比べひとまわり小柄、ヤクシカに至っては一目で違和感を覚えるほど小さく、大人の鹿でもニホンジカの子鹿程度の大きさしかない。ニホンジカよりも大きな北海道のエゾシカと比べると、体重は3分の1に満たない。
私は研究者ではないため詳しいことはわからないが、どうやら島の法則(Island Rule)というものがあって、それによると島の大型動物は小型化する傾向にあるらしい。
早朝の船で屋久島へ。しかしいきなりショッキングなニュースが…
ヤクザルとヤクシカのもっとも多く分布する島の西部は、広大な照葉樹の森に覆われている。屋久島には島を一周するように外周道路が敷かれており、この森の中を通る区間(大川の滝〈おおこのたき〉付近から屋久島灯台までのおよそ20km)は「西部林道」と呼ばれている。ここを車で走るときはヤクザルやヤクシカと会わずに森を抜ける方が難しい。
2023.11.24(金)
文=大島淳之