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◆『この素晴らしき世界』の沢村一樹

微笑みがうさんくさいチャラおじさんの本音はいかに!?

 スーパーマーケットでパートをしているごく普通の主婦・浜岡妙子(若村麻由美)が、ある日いきなり大女優(若村麻由美)の替え玉を演じることに……という驚きの展開で話題の『この素晴らしき世界』(フジテレビ系列)。

 若村麻由美さんのひとり二役の演じ分けや、主婦パートの時の自然さが上手くて面白く見ていますが、大女優の方の夫、水田夏雄を演じているのが沢村一樹さん(以下敬称略)。

 夏雄は昔は売れない俳優かつ現在は大女優の夫だけれどヒモ状態で、昼間に何をしているのか今ひとつわからない男(こういう人たまにいますよね)。一見ノリが軽く適度にチャラく、人当たりがよく優しい。急に芸能界に放り込まれた妙子に、女優としてのふるまい方やその世界のお作法を優しくレクチャーしてくれる、頼れるアドバイザー的な存在なのですが、いかんせんその爽やかな笑顔がうさんくさい(いい意味です)!

 自分の妻が失踪中の割に特に慌てている様子もなく、替え玉となる妙子と息の合った記者会見までこなしますが、何か隠している様子のシーンもあり、見ている側はいまいち信頼しきれないキャラクターです。

 その“何を考えているのか不明”感は、沢村一樹の爽やかな笑顔によって増幅されています。

 彼は1996年のデビュー以来、人気作に数多く出演。『内田康夫サスペンス 浅見光彦シリーズ』(TBS系列)で長きにわたり主演を務めたり、『DOCTORS~最強の名医~』(テレビ朝日系列)シリーズや『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』シリーズのシーズン3・4でも主演を務めるなど、当たり役もたくさんあるベテラン俳優。

 ちょっと頼りない感じの漂うキャラクターや、どう見てもカッコイイビジュアルから、上品、爽やか、誠実、優しいといったキャラクターの印象が強めですが、個人的に気に入っていたのは『ブラック・プレジデント』(関西テレビ・フジテレビ系列)で演じていた、大手企業の毒舌社長役。笑顔で生徒に毒舌(に聞こえる内容)を吐きまくるキャラクターは新鮮で痛快でした。

 ドラマではないけれど、バラエティー番組『サラリーマンNEO』(NHK総合)シリーズで演じたラテンなノリの“セクスィー部長役”では、それまでの爽やかなイメージを完全に裏切ってファンを爆笑させると共に、あれ? この人思ってたより変な人なのかも……? という疑念を抱かせました。

 つまり沢村一樹は、実は悪いことを考えていたり、変人と呼ばれるような役が意外にハマるのです。だからこそ水田夏雄がどんなに優しい笑顔でいても、なんか裏がありそう……とかんぐってしまう。夏雄というキャラクターは想定以上に彼にぴったりだったんですね。ちなみに決してふざけたキャラクターだけが好きというわけではなく、2003年版の『白い巨塔』(フジテレビ系列)で演じた、権力争いに巻き込まれる外科医・菊川昇役も、静かな闘志を感じさせて素晴らしかったです。

 物語は、ついに失踪していた女優の妻が帰ってきたので、夏雄の動向や本音もわかってくるのでは、というところ。チャラついたノリのままでいくのか、意外に熱い場面があるのか楽しみです。

『この素晴らしき世界』

毎週木曜よる10時放送(フジテレビ系列)
https://www.fujitv.co.jp/subaseka/
Instagram:@subaseka_fujitv

2023.09.08(金)
文=斎藤真知子