インテリアから食器類まですべてこだわり抜いた

「もともと“桃源郷”をイメージしたお店をいつか出したいと考えていて、オープンは今年ですが、構想はだいぶ前からしっかりありました。私の頭のなかにある桃源郷という場所は、例えば竜宮城のような、日本のおとぎ話に出てくるような場所をベースに、シルクロードを経て日本に流入した、別の時代の別の国のものをすべてミックスさせた幻の空間というイメージです。インテリアから食器類まで和洋中すべての要素を散りばめていますね」(矢島沙夜子さん、以下同)

神々の視点でいただく、ジオラマのようなリアルな「山菓子」

 ここからは「小楽園」で味わえるスイーツの数々を堪能していきましょう。

 まず、看板メニューの「山菓子」。

 日本各地の山を模した「山菓子」は、中身はチョコレートで出来ていて、チョコレート型は実際の地図上のデータを基に3Dプリンターで忠実に再現したんだとか。

 オープン前からかなり試行錯誤して開発したという「山菓子」についても、その誕生背景と苦労した点を伺いました。

「お店のコンセプトである桃源郷は、八百万の神様のような神々が集まる場所だろうなと想像したところから生まれました。ですから神様になったような気分になれたらおもしろいなという着想がスタートでしたね。ジオラマのようにリアルな形状にこだわっているのは、神々の視点で、山を上空から見下ろしているかのようなイメージを持っていいただきたかったからです」

●「山菓子 富士山(春)」(4,860円)

 こちらは人気メニューの富士山。中身は苺、桜の塩漬けを練りこんだ桜色のガナッシュ、静岡の特産・抹茶のクランチチョコレートなどが贅沢に使われています。

●「山菓子 鹿児島県 桜島 御岳(夏)」(3,450円)(左)
●「山菓子 北海道 利尻山(冬)」(3,450円)(右)

 写真左の鹿児島県 桜島の御岳には、パッションフルーツと鹿児島の特産品の芋焼酎が隠し味として使われているとのこと。写真右の北海道の利尻山は、ラムレーズン、オホーツク海の塩、利尻の昆布粉などが材料。チョコレートの甘さに塩味のアクセントがおいしさを引き立てます。

「『山菓子』のレシピについては、お店のスタッフと相談しながら、一から作り上げました。各山々の地域の特産物をレシピとして使っているのですが、ベースのチョコレートに合う特産物を片っ端から食べ比べて、地道に何度も何度も試作を繰り返したんです。また、メニューの山々は春夏秋冬に合う山をピックアップしました。例えば冬の雪山には日本の最北端とも言える北海道の利尻山を採用したり、ひときわ緑が映える夏の山には鹿児島県の桜島 御岳を採用したり。その山のイメージに合った季節を、お菓子の見た目に落とし込んでいます」

2023.07.14(金)
文=瑠璃光丸凪(A4studio)
撮影=佐藤 亘