岩の上で昼寝。大自然に抱かれた海外トレイル

――国内にとどまらず2020年にはアメリカのジョン・ミューア・トレイル、この年末年始にかけてはニュージーランドの北島にあるアラウンド・ザ・マウンテン・サーキットに行かれました。

 ジョン・ミューアー・トレイルは私が会社を辞めたあとに、ニュージーランドは夫が脱サラをしたので、行けたんですよね。いつも2人のスケジュールが直前まで決まらなくて人気ルートが予約で埋まってしまい、毎回少しマイナーなルートを歩いています。

――初心者レベルで恐縮ですが、トレッキングに予約が必要なんですね。

 環境保護の意識がすごく高いので人数制限をしているんです。だからジョン・ミューア・トレイルでは人に会わず鹿とリスしかいない。それがいいんです。動物との共存、ということもベースにあるんでしょうね。ジョン・ミューアー・トレイルだとクマがいることが前提なので、ベアキャニスター(通称・クマ缶)を持参することが義務になっています。入山時に荷物チェックまであるんです。持っていないと山にも入れてもらえないことに驚きました。食料や化粧品など匂いがするものはすべて缶に入れて、まずはクマを寄せ付けないようにする。

 この缶は円筒の形をしているので、万が一クマに襲われても、手が滑って壊せない仕組みになっているんです。人間を襲えば食料が手に入るとクマに学習させないことが大事。この取り組みによって、クマによる事故はだいぶ減ったそうです。人間を一度でも襲ったクマは射殺されてしまうので、共存という意味でも効果的なようです。

――トレッキングではどんな過ごし方をしているんですか?

 大きな岩があったら昼寝をします。ジョン・ミューア・トレイルでも大きな岩があって、1時間半くらい、普通に寝ました。これが熟睡できるんですよ。

 コーヒーは必ず飲みます。水場がどこにあるか事前に調べて歩くんですが、ないときは水の保存容器に入れて運んだりもします。ですが、水ってすごく重い……。いざというときに川の水を濾過して使えるように浄水器は常に持っています。

――すごくいいマットを購入されて、それを背負って登るそうですね。「暮らすように過ごす」ための必需品ですか?

 持っていくときはコンパクトで、テントのなかで膨らませてベッドにします。そのマットがあることで、自分の家っぽくなる。

 睡眠ってすごく大事で、熟睡できると翌日もちゃんと楽しい。朝の光だったり、コーヒーのおいしさだったり、トレッキングの楽しさ、緑の美しさが全然違います。鳥のさえずり、風の音、川のせせらぎなどの音もコンディションがいいとクリアに聞こえてきます。

2023.06.18(日)
文=CREA編集部
写真=榎本麻美
ヘアメイク=根本秀子