「ソトノマ」は五島の中の人と外の人がつながる場所

 そのソトノマは、この島出身で、かつて長崎でインテリアコーディネイターとして働いていた有川和子さんが10年前に始めたお店。空き店舗だったスーパーマーケットを、仕事で培った知識と経験で、手作りで改装。

 自分の家の居間や茶の間のような感覚で過ごしてもらえる空間を作りたいと、“外の自分の間”から、店名を「ソトノマ」にしました。

 人間工学の知識を活かした造りの店内には、そこにいる人の目線が同じ高さになる仕掛けが。テーブルやイスは少し低く、トンと足がつく。居心地がいい。そして“島のおかあさん”和子さんの、こだわりと愛情たっぷりの料理も多くの人を引き寄せます。

 ソトノマはいつしか、島の人、移住者、観光客の垣根なく情報交換ができる場として、あるいは人と人とのつながりが生まれる場としての、パイオニア的存在となりました。また、「ないものは作ろう」の精神で、地域で協力してNPO法人を作り、桑田さんを中心に現在、学童保育も行っています。

 そんなソトノマに、2年前、コロナの影響や後継者問題で閉業の危機が。和子さんから「店をやってもらえないか」の誘いに、この店が島にとってどれだけ大切な存在か知っていた桑田さんは承諾。そして現在に至るわけです。

2023.05.20(土)
文・撮影=古関千恵子