水よし、米よし、地酒よし。これが「越中三方よし」。旅先でおいしいものを食べるのなら、その土地のお酒を合わせるのがいちばん。2015年春の北陸新幹線開業を控えた富山でも、海の幸、山の幸にぴったりの個性的な地酒が楽しめるという。

 いざ、越中とやまの食ロードを巡る旅へ。

» [握(にぎる)] 天然の生け簀富山湾から届く極上のネタを堪能
» [〆(しめる)] 昆布で〆る。北前船が運んできた「食」文化
» [獲(とる)] 氷見の寒ブリがおいしい理由は定置網漁法にあり
» [栽(うえる)] 庄川が育む大地の実りが砺波平野を彩る
» [和(あえる)] 砺波のソウルフード。ご飯がすすむ「よごし」の素朴さ
» [漬(つける)] 南砺で見直した麹のチカラ。伝統の発酵食で身体をリセット
» まだまだあります。とやまの「食」

富山を味わう、富山に酔う

酒の味はその土地の食と結びついている。海沿いであれば、魚介に合う「キレ」。山里であれば、山菜や川魚に合う「コク」。行く先々でぜひ確かめてみたい。
〈写真右から〉氷見・髙澤酒造場「純米吟醸 獅子の舞」、朝日・林酒造場「純米吟醸 黒部峡」

 去年は立山の大自然に癒やされた。今年はおわら風の盆と富山の匠の技に感動した。3度目の富山はどんなプランにしよう? ヒントになればと、友人とふたり、東京のデパートで開催されていた富山物産展に足を運んだ。そこで出会ったのが富山県酒造協同組合事務局長の田近清光さん。富山の地酒の魅力を熱く語ってくれた。「なにより富山は水がいい。立山連峰に連なる山々を源流とした伏流水ですからね。積雪により水量も豊富ですし、昭和・平成の『名水百選』で、富山からはそれぞれ4カ所が選ばれています。ひとつの県で8カ所って日本一なんですよ。その水で育つ富山の酒米はもちろん良質。水もよし、米もよし。それを熟練の杜氏が仕込むわけですから、富山の地酒がおいしくないはずがない」と田近さん。富山のお酒の特長は、「山田錦(やまだにしき)」や「五百万石」といったお酒造りに適したお米(酒造好適米)を贅沢に使うところだという。酒造好適米は食用米に比べると収量も少なく、値段も高い。それを惜しげもなく使う(酒造好適米の使用割合が全国平均20%強に対し、富山では80%を超えている!)ところに、各蔵元の酒造りへのこだわりが感じられる。

 富山で地元の人が飲むのは、たいていその土地のお酒だという。富山で造られたお酒の7割以上が県内で消費される。東京になかなか入ってこない銘柄があるのは無理もない。それならこちらから出向いていこう。今回の富山への旅のテーマは「食」&「地酒」で決まりだ。

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志水 隆=写真
編集部=文
関 幸子=プロデュース
富山県・富山市・氷見市・高岡市・砺波市・南砺市=協力